ニッケイ新聞 2009年8月1日付け
ブラジルとスペイン両国政府は三十日、米軍がコロンビア国内のマランボ基地とアピアイ基地に加え、さらにパランケロ第三基地を設営することでラテン・アメリカでの介在拡大を図っているとして、ラテン・アメリカ各国とEU共同体に反応を打診と七月三十一日付けフォーリャ紙が報じた。米政府はコロンビアと軍事同盟締結を交渉中で、コロンビア政府は米軍に対し国内三基地の完全開放と基地の大幅拡張、装備の近代化で軍事力強化、同国の軍拡に拍車がかかる。ルーラ大統領は、同軍事同盟に強い不快感を示した。
米政府は十年計画で五十億ドルを投じて、パランケロ基地に南米の戦略拠点を設け、地域へ睨みを利かせる構想だ。米兵も八百人に増員、民間技術要員は六百人を派遣。
伯西両国にとって、この軍事計画は地域に軍拡競争をもたらし、軍国化を図ることを意味する。コロンビアを米軍基地の国と化し、ロシアやイランの動きを封じる戦略構想と理解している。
ラテン・アメリカの外交政策は見直す必要があると、ミゲル・モラチーノス西外相がアモリン外相に語った。伯外務省もアントニオ・パトリオッタ駐米大使に命じて、米政府の説明を求めた。
伯米間には、透明外交のルールがある。コロンビア国内三基地を指令するのがコロンビアなら、なぜ米兵増員を行うか。米兵の指揮を、米国が採るなら協定違反だ。これらについて、前以って何ら説明がなかった。
コロンビア国内で米軍が作戦展開を実施するのは遺憾であると、ルーラ大統領は不快感を露にした。軍事同盟は未締結だが、八月十日エクアドルで開催されるウナスール首脳会議で、軍事同盟締結を議題にする用意があると大統領が表明した。
米国は昨年、ブラジル近海に、一通の通告文書だけで、第四艦隊を演習と称して派遣した。岩塩層下油田の情報収集が目的と思われるが、米政府のすることは無神経だ。
コロンビアのウリベ大統領は米軍基地の強化を麻薬対策だというが、本音は仮想敵国への次期戦争を視野に入れた布石であり、ベネズエラのチャベス大統領への面当てと外務省は見ている。
マルコ・A・ガルシア大統領顧問は、風雲急を告げることで、大統領命令によりチャベスとウリベ両大統領の仲を取り持ちに行く。三日にはチャベス大統領を連れて、ボゴタへ行くらしい。戦略物資が豊かな中南米は、新たな謀略の的になりそうだ。