ニッケイ新聞 2009年7月31日付け
サンパウロ市西部のサンペドロ劇場で、視覚障害を持つ人にも楽しめるよう、特別な配慮を施したオペラの上演が行われている。
二十九日付エスタード紙によると、八月一日まで上演されるのは、イタリアのオペラ作曲家ピエトロ・マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ(田舎の騎士道)」(一八九〇年)。
健常者のための訳文の舞台上部のスクリーン映写はもちろんだが、同劇場では、視覚障害を持つ人々にはオーケストラの音楽と歌手の美声を聞くだけに終るオペラが、臨場感を持って味わえるように一工夫している。
点字版のプログラム作製の他、舞台に誰が登場し、どんな動きをしているかなど、細かい動きの一つ一つを、特別に訓練されたスタッフが、同時通訳用ヘッドフォンで伝えてくれるのだ。
初日である二十九日の劇場の様子や観客の反応は、三十日朝のテレビニュースなどでも放映。初めての試みに喜んで参加した人々の中には、他の劇場のオペラで、舞台の動きの説明を受けていたところ、前の席に座っていた婦人から苦情を受け、障害者であることを説明した経験者もいた。
今回の上演では、視覚障害者は皆、特別席に招かれ、点訳されたプログラムとヘッドフォンを渡されてから鑑賞を開始。
間奏曲が有名で単独演奏されることも多いという「カヴァレリア・ルスティカーナ」は、グアルーリョスの青年シンフォニーの演奏で上演され、テノールのマルセロ・ヴァヌッシ、ルーベンス・メジーナなど、現在注目されている若手ソリストも出演している。
バーラ・フンド街171番に在る同劇場では、上演毎に視覚障害者用の無料招待券一五組が用意されているが、ヘッドフォン確保のため、電話11・7420・1599かvegner.nascimento@vivo.com.br.ingressoで予約が必要。招待券のない人の入場料は二〇レアル。
地下鉄のサンタ・セシリアに導入された点字地図や、ピナコッテッカのギャラリーの触れて鑑賞できるブロンズ像(ヘッドフォンでの説明付)など、視覚障害を持つ人々にも配慮した施設の増加と共に、サンペドロ劇場のような試みが、全ての人に開かれた空間を生み出していく。