ニッケイ新聞 2009年7月29日付け
「日本は盆踊りが一回だけだからねえ」―。そんなあたり前のことを言われ首を傾げたが、話を聞いて膝を打った。戦前移住地が多く、移民魂色濃いノロエステ各地では、一年の半分以上に渡り、盆踊りのお囃子が聞こえるというのである▼五月のプロミッソンを皮切りに、フォルモーザ、平野植民地、グアララペス、バウルー、アラサツーバ、アリアンサ、掉尾を飾る十二月のビリグイまでほぼ毎月。七、八、九月は毎週といっていい。特筆すべきは、世界唯一の常設盆踊り会場(ボンオドリードロモ)で有名なペレイラ・バレットだろう▼中心に櫓が立ち、コンクリート製半径十メートルほどの会場の周囲には観客席が放射線状に延びている。その上に競い合うように広告が立ち並ぶ(踊り手が何度も回って見るのだから、広告効果は高いだろう)。専属のお囃子に合わせ、黒人白人日系人の老若男女がしっかり身についた振りを見せる。その〃日伯融合絵巻〃に目頭が熱くなった▼ノロエステ連合は今年創立から半世紀を迎えるが、その組織強化としての作用もあるのではないか。お互いの大会に来賓として出席するだけに、この半年間で密接な関係が築かれる。ハワイ・米国での呼称は、「ボン・ダンス」とそのままだが、ブラジルでは「BOM ODORI」。まさに「いい踊り」なのである▼「お盆じゃないのにねえ」と笑う参加者の苦笑いも耳に挟んだが、そもそも先祖供養がお盆の由来。どこの移住地でも入植慰霊祭が併催されることから考えても、伝統的に正しく、多くの人の笑顔が礎となった先人の鎮魂となっていると思いたい。 (剛)