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対米貿易が入超に=主要輸出先は中国へ移る

ニッケイ新聞 2009年7月23日付け

 九年にわたって黒字であった対米貿易収支が、二〇〇九年は赤字となりそうだと二十二日付けフォーリャ紙が報じた。対米貿易は殆どがコモディティ輸出であったことと、米経済が過去七十年で最悪の事態に遭遇したことが原因のようだ。
 米国は今年上半期、対ブラジルで二十五億ドルの出超となり、米国にとって六番目の輸出超過国となった。対米貿易では赤字でも、ブラジルの貿易収支そのものは、同期に百四十億ドルの黒字を計上している。
 米国はこれまで、国際的輸入国として世界経済を支えており、二〇〇八年の貿易赤字は六千九百六十億ドル。ブラジルにとっても、これまでは最大の輸入国であった。
 この通商関係の変化は、国際経済を蝕んだ金融危機前の昨年八月に予測できたことだ。しかし、対米貿易赤字転落の最大の原因は、対米輸出が米国からの輸入以上に落ち込んだことだ。
 ブラジル産四大商品の対米輸出で占める比率は年々減少し、今年上半期は一〇%強となった。
 一方、ブラジルの輸出先国は米国から中国へ移り、往年の米国中心貿易から様変わり。対中輸出が占める比率は今年上半期、昨年同期の八・三%から一五%へ飛躍した。
 RCコンサルタントのファビオ・シウヴェイラ氏によれば、金融危機が米経済にもたらした衝撃はブラジルより遥かに深刻で、米産業界は徹底的な経費カットを行った。と同時に、ブラジルは同時期、米製品の価格低下以上のコモディティ価格暴落に悩まされた。
 ブラジル貿易協会のジョゼ・アウグスト・カストロ会長は、対米貿易は二〇一〇年も赤字が続くと予想。中国に市場を奪われた自動車部品や皮革製品、衣服などの加工品での失地回復は、望み薄と思われている。
 同会長も欧米経済立ち直りの可能性は否定しないが、対米貿易でのブラジルは工業製品での競争力で中国に遅れを取った形となっており、中国などのアジア地域を主力に努力をすべきだという。
 対米輸出の落ち込みは政府にとっても懸念材料で、加工品輸出の減少を特に心配している。ブラジル政府は、米国市場の活性化で商業ルールの簡易化を話し合う予定で、危機から完全脱却した後の米国市場戦略をいま、考案している。