ニッケイ新聞 2009年7月16日付け
十年前にはまったく姿を見なかった中国が、今ではウルグアイで自動車を生産している――。マッククレシー紙のテイラー・ブリッジ記者は十五日付けエスタード紙に寄稿を掲載し、以下のように論じている。
中国はブラジルの石油産業へ百億ドルを融資するなど南米進出に力を入れている。ブラジルにとって中国は、米国を抜く最大交易国だ。
米国がアフガンやイラクへの武力介入に熱中し、南米に真空地帯をつくった一方、中国はその虚を突いた。南米では米国が沈み行く太陽なら、中国は昇る太陽。中国の静かな侵攻が進行中だ。
中国は南米の津々浦々に在外公館を設置し、中国文化を広めつつある。これまで中国は、要人しか海外旅行ができなかった。それが、一般庶民に至るまで、世界の隅々を見学させている。
リオに遊びで訪れたアイピン・ユアンさんが、気に入って住み着いたのは九七年。ルーラ大統領が二〇〇四年に訪中したとき、彼女が中国語学校を開校した時は六人の生徒から始めたが、今では三百人に膨れ上がり、中にはペトロブラスやヴァーレの職員までが学んでいる。
またBRICsの一環で、伯中戦略協定も締結。中国は、ブラジルを資源供給源とする。
多くの国々は、中国に対し、価格破壊と市場荒らしの元凶として否定的な見方をする。米国も中国の潜在的能力に危機感を抱いている。軍事力を増強することで、仮想敵国視する傾向もある。
米国は南米を裏庭視するが、中国はチャベスもウリベもルーラも同一視する。中国にとって関心は経済であり、政治でも思想でもない。ペルーなどは、中国化を国策としている。
現在は金融危機を機に、中国が南米諸国への金融支援を試みている。ペトロブラスも、その一つだ。決済は原油や鉱物資源で行う。これからは、南米における中国との共存共栄は避けられないようだ。