ニッケイ新聞 2009年7月15日付け
WHO(世界保健機関)が十三日、新型インフルエンザの世界的蔓延を不可避とし各国政府に緊急態勢をとるよう要請したことを受けて、ブタンタン研究所が今後開発生産する新型インフルエンザ用ワクチンの一〇%を、貧困国へ供給するワクチン確保のためWHOに提供することを決定と十四日付けエスタード紙が報じた。南リオ・グランデ州保健局は十三日、ブラジルで三人目の死者が出たことを明らかにした。また感染者の死亡率が高いアルゼンチン政府は十二日、対策会議開催のためブラジルやチリ、ボリビア、ウルグアイ、パラグアイの保健相を召集した。
新型インフルエンザは最早、水際作戦では防御不可能な状態に突入しており、WTOは、北半球が秋を迎える九月ごろから本格的に蔓延すると予想。新型インフルエンザ用ワクチンに関しても、「先進国は製薬会社と十億アンプル分の買い付け契約を交わしており、あと八億分も交渉中で、生産量の大半を買い占めつつある」と警告。世界各国に平等に供給されることは不可能との見解を示している。
WTOのマーガレット・チャン事務局長は、貧困国へのワクチン供給を確保するため、製造パテントで直ちに交渉を行うと発表。国民全てに行き渡らない場合は、保健所や空港などの最前線に勤務する職員への摂取を優先するよう勧告した。
亜政府は最悪の事態に備えて、南部地域の情報分析と共同作戦の展開を提案した。同国は九日現在の公式発表では、二千四百八十五人の真性感染者と九十四人の死者となっている。死者数は米国やメキシコに次ぐ三番目。潜伏患者も含めると亜国の感染者は十万人に達すると見られている。
ブラジルの場合、南リオ・グランデ州パッソ・フンド市の病院で六月二十八日に死亡した運転手が犠牲者第一号。続いて同月三十日、オザスコ市の少女が犠牲者第二号。ポルト・アレグレの病院で七月五日、死亡した少年が第三号とされる。亜国から帰国し五日に死亡したウルグアイアナ市民は真性確認されてない。
犠牲者第三号の少年は普通の肺炎と診断され、肺治療の病棟に入院。感染治療を受ける前に死亡した。同州保健局のテーラ長官は、同州が同疾患蔓延の直前にあると発表した。
犠牲者の少年は別の疾患治療も受けていたが、国外へ出たことはなく、亜国から帰国した学校の女教師から感染した兄から感染した。また既往症がない患者でも、新型インフルエンザに感染し重度の肺炎に発展する例もあるようだ。