ニッケイ新聞 2009年7月8日付け
サンパウロ市の中心セー広場で六日、果物の露天商や清掃夫の一団が犯罪映画を地で行くように突然拳銃を構え、通りすがりの市民を驚かせたと七日付けジアリオ・ド・コメルシオ紙が報じた。一団はゼロ地点作戦の一環で変装した市警八十人で、四十五日間にわたってセー地域の麻薬取引や詐欺、窃盗、盗品売買、公文書偽造などの違法行為を内偵していたもの。犯罪の背後に組織があり、市警は五日から六日の二十四時間にクラコランジアとセーで二回の手入れを行い、三百五十五人の容疑者を拘束した。
市警組織犯罪課(DEIC)は、セー広場に根を張るアングラ世界に踏み込んだ。組織のメンバーは、付近のビル七階と駄菓子店を根城にしていた。清掃夫に変装し街路の掃除をしながら、またビル前に果物の屋台やポップコーンの車を据え、同所に出入りする人物をチェックした。
セー広場では、何でもありだ。外国人にブラジル人の身分証明書を発行したり、試験も受けずに運転免許証を取得、医師や弁護士その他の国家免許、診断証明書、無犯罪証明、居住証明、大学の卒業証書など。医科大の卒業証書が千四百レアルで購入できる。
あらゆる犯罪カルテルの吹き溜まりがセー広場周辺にあり、ここで取引される。盗品売買の資金が直ちに麻薬取引に再投資され、違法資金が瞬く間に増えると市警当局がいう。
セー地域は盗品売買が今年第1四半期に前期比三・八%増、前年同期比で三一%増となったことでゼロ地点作戦の候補地に挙がった。セー地域で今年、通行人から財布などを盗った窃盗犯罪は九百四十二件。
セー地域では、犯罪の内容ごとに構成された独特の組織が六つある。セー広場で屋台を構える露天商は、殆どが犯罪組織の連絡係りとなっている。屋台の上に並ぶ商品は、表向きに過ぎない。商品を売りながら、組織の指揮を採っている。
文書偽造組織は今、あらゆる公的機関の用紙とスタンプを常時準備している。所轄官庁責任者のサインを収集し、必要に応じてどんなサインでも精巧に真似る。偽造診断書は、四十レアルから百五十レアルで販売されるという。