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ルーラ大統領=ビザ切れ外国人の特赦法に署名=2年間の滞在合法化へ=先進国の移民政策批判=ウー下議上程の法案

ニッケイ新聞 2009年7月3日付け

 ブラジルへ二〇〇九年二月一日以前に入国したビザ切れ外国人の滞在を合法化する特赦法に、ルーラ大統領が二日に署名したと同日付け下院議員通信などが報じた。同特赦法は六月四日、下院で承認され大統領の裁可待ちとなっていた。署名後、六日付け官報に掲載される予定。ビザ切れ外国人は、その時点から六カ月以内に手続きを行えば、二年間の居住許可のプロトコーロ(申請受取証)を取得できる。居住許可を取得したら、二年後に永住権の取得も可能という。排斥傾向の強い欧米の外国人労働者受け入れ政策への、身をもって示した反論として注目を浴びそうだ。

 不法滞在の外国人は密入国者も含めて現在、十八万人から二十万人いると見られる。法務省の説明によれば、特赦法によって居住を許された外国人は選任される公職以外、ブラジルで生まれたブラジル人とほぼ同等の権利を有するという。
 EUや米国で吹き荒れている外国人労働者の排斥とは反対に、ブラジル政府は不法滞在者を特赦で優遇する模範例を世界へ示威し、理想的な移民政策を誇示する。
 ブラジルへ入国する誠実で勤勉な労働者は、希望する生活水準と正当な誇りある待遇を受け、ブラジルの発展に寄与すべきだとしている。
 同法案はウイリアム・ウー下議(PSDB=民主社会党)が下院へ上程。不法滞在者の多くは、ボリビア人やパラグアイ人、ペルー人、アルゼンチン人とされる。これまでに一九八八年と一九九八年の特赦法で、五万人に永住権を与え合法化した。
 ブラジルは現在、四百万人が国外へ出稼ぎに行き、虐待と屈辱のもとで呻吟している。
 ルーラ大統領は国際労働機構(ILO)会議で六月十五日、欧米における外国人労働者に対する差別を厳しく糾弾した。先進諸国では金融危機のしわ寄せを、政府が率先して外国人労働者に転嫁していると非難した。
 さらに「金融危機による失業者の続出を、外国人労働者を解雇することで収拾する歪んだ移民政策だ」と指摘した。
 法務省は、特赦法の適用を受けて居住許可を取得するには、入国証明の書類、国内外で刑事告訴されておらず国内で収監された経歴がないことの証明などが必要とされそうだ。それに加え、外国人登録証の申請費用を負担しなければならない。
 二年間の居住許可(外国人登録)が切れる九十日前から、永住権への切り替えを申請できる。その時には、次のような別条件が課せられる。就職証明もしくは家族を養うのに十分な資産証明、税金の未納がないこと、無犯罪証明書、この間に九十日間以上連続してブラジルから離れていないことなどだ。