ニッケイ新聞 2009年6月25日付け
大サンパウロ市圏住民一六〇万人の水瓶のビリングス湖周辺で、二〇万戸余りの家屋所有を合法化する法案が議会を通過し、知事の承認待ちと二十四日付エスタード紙が報じた。
ビリングス貯水池保護特別条例と命名された法案では、一二五平方メートル以下の土地家屋に対し、不法侵入、違法建築のものも含め合法化。登記書も発行するという。
これに対し、環境問題専門家は、水源地や水質を守り、天然の植生保護の方向に逆行し、住民の命や水源地そのものを脅かすと懸念する。
同湖については、〇八年十一月八日付フォーリャ紙が、同湖の水質汚染物質は許容量の一〇〇倍に達し、不法侵入と、それに続く生活廃水や工業排水垂れ流しが、汚染を増長と報道している。
大サンパウロ市圏の六市では浄水場で処理出来ずに流される下水が三億九四〇〇万リットル/日、サンパウロ市でも違法建築などで未処理のまま流される生活廃水が五〇万リットル/日と同月十七日付エスタード紙も報じている。
当局などの管理を逃れて土地や家屋を手に入れた結果の一部だが、ビリングス湖周辺は、環境保護法で認められない所にも家などが立ち並ぶ地域の一つだ。
今回承認の条例では、一二五平米以下の土地家屋については、恩赦扱いで登記書も発行との部分が修正される可能性もあり、環境修復第一地帯と呼ばれる地域の家屋は撤去という。ただし、専門家は登記書を得た住民が家を売り、保護区内での不法侵入を繰返す事を懸念している。
人口密度が四〇〇〇人/平方キロと高い地域での不法侵入や、違法建築容認に繋がりかねない同条例は、同湖保全を忘れたものという環境局担当者に対し、条例はこれ以上の不法侵入などを防ぐためと州議は弁護する。
ビリングス湖周辺やカンタレーラでは、登記書がない土地や家屋の売買は当たり前で、家さえ建てればとの風潮もあったが、ここ二年でカンタレーラ周辺の違法建築六四軒の取り壊しなど、取締りも強化されているのも事実のようだ。
連邦政府のアマゾンの土地所有合法化や、既存の農地保護のため、連邦法より緩い環境基準承認のサンタカタリーナ州議会と五十歩百歩の州条例を、セーラ知事がどう扱うかも注目される。