ニッケイ新聞 2009年6月10日付け
先日取材の帰りにリベルダーデを歩いていると、道端に立つ知人を見かけた。バスを待ちながら、初対面の隣の婦人と話しているのだった。
日本語なのでてっきり日系の人だと思っていると、台湾出身で、生まれたのは日本。戦後親たちと中国の大陸へ渡り、何十年かを過ごしてようやく日本へ。そしてブラジルへ来たと話していた。
日本の台湾統治時代に生まれ、戦中の日本を生き抜き、戦後は中華人民共和国建国後の大陸で文化大革命にも遭遇。記者には想像もできない人生だが、彼女の口調はあっさりしたものだった。
そんな中でも日本語は忘れなかったという。「日本に住む家族に手紙を書いていたからでしょうね」。サンパウロ市に住んで二十数年。今は老人会に参加しているという。
日本で暮らしていてもめったに出会うことのない偶然。こうした不思議なめぐり合わせも東洋街ならでは、か。 (ま)