ニッケイ新聞 2009年6月6日付け
政府は五日、キューバに対する米国の経済制裁即時解除に向けた対話設定をイタマラチー(外務省)へ指示したことを同日付けAFサイトが報じた。OAS(米州機構)が一九六二年、米ソ冷戦の結果としてキューバを排除決議し、今回同決議を無効としたことで経済制裁はもはや無意味であると、ブラジル政府は見ている。制裁解除は交渉によるとはいえ、米議会の承認も必要。同問題の交渉で鍵を握るのは、トマス・シャノン駐伯米大使とホルヘ・ボラーニョス駐米キューバ代表の二人と政府は考慮している。
米キューバ関係を取り繕い、米政府を説得したのはブラジルであった。オバマ米大統領が了承し、キューバとの対話の場を設ける段取りをつけるため特使をブラジルへ送った。ブラジルは対話に臨む両国代表に、シャノン氏とボラーニョス氏を指名した。
OAS首脳会議では対話が原則論に留まり、言い分は平行線をたどった。ブラジルは双方の主張を入れて収拾役を努め、OASによるキューバ排除決議の取り消しにこぎつけた。
OAS本会議では、ベネズエラとエクアドル、ボリビアが経済制裁解除の強硬演説を打った。ブラジルは火消し役に回ったが、制裁解除がなければOASを無用の長物と三カ国が糾弾した。
当のキューバは、排除決議取り消しを評価したが、魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)するOASへ加盟の意思がないことを表明。キューバ国営テレビは「決議取り消しは歴史に残る事件と認めるが、OASは下らない組織だ」と酷評し、「キューバは決議取り消しを願ったことも、加盟を希望したこともない」という。
キューバのカストロ前議長は同地紙に「トロイの木馬」と題する論説を発表。OAS加盟国はキューバを窮地へ追放した共犯だと糾弾した。さらに、「OASは麻薬に支えられる機構で、オバマ米大統領のいうことを本気にする者はバカのお人よしだ」と罵倒した。
ルーラ大統領は「キューバが醜いアヒルの子役を止めるよう」訓告した。「キューバ抜きのOASは理解に苦しむ。OASへの入場券をもらったのだから、負け惜しみを止めてOASの仲間に入れ。四十七年間も臥薪嘗胆に耐えたことは勝利に値するが、いつまでもひねくれているな」と大統領が諭した。