ニッケイ新聞 2009年6月5日付け
「アマゾンの声は届かなかったか…」。九月に開催されるアマゾン移住八十周年に、皇室のご来伯の可能性がなくなったことが先々週初め、マナウス総領事館から日系団体代表者に伝えられた。現地では「本当に無念」と強く残念がる声が聞かれ、この対応に複雑な想いを持ったようだ。特に〃アマゾン移民のふるさと〃トメアスー移住地には、今まで一度も皇室が来られていない。今回は一世が中心になった最後の式典といわれるだけに、「今度こそ」という期待が強かった。皇室への想いと共に、地元の反応を聞いてみた。
在ベレン日本国総領事館の名井良三総領事は五月二十四日、ニッケイ新聞の取材に対し、「皇族は来られないことに決まった」と明言した。その理由は「翌年に同じ国に行かないから。宮内庁はいろいろ検討したが、二年連続は無理ということになった」という。
常陸宮ご夫妻が日本人移住百十周年の記念式典出席などのため、六月十一日から二十二日にかけて、南米のペルーとボリビアを公式訪問されることが五月十九日の閣議で了解された直後のタイミングで、アマゾン関係者に伝達された。
これに対し、地元日系社会の反応は複雑だ。
皇室に来ていただきたいという要望は、以前から外務省を通して宮内庁に伝えられ、「かなり可能性がある」というニュアンスで反応が伝えられていただけに、今回のご訪伯断念という知らせにショックを受けた現地の日系人は多かった。
昨年の皇太子殿下、今年の常陸宮ご夫妻のどちらかに立ち寄って頂けるのではという期待が寄せられていたからだ。
天皇・皇后両陛下が一九九七年五月三十一日から約十日間、移民九十周年を記念してご来伯になり、まっさきにベレンを訪ねられたことは記憶に新しい。
トメアスー文化農業振興協会の海谷英雄会長(同地移住八十周年記念祭実行委員長)も「一同、大変期待しておりました。誠に残念です」と無念の余り表情を曇らせ、「この上はせめて、それに代わるような方になんとか来ていただけないか」との強い願いを語った。
昨年六月、皇太子殿下ご来伯時、在ブラジリア日本国大使公邸でご接見の機会に恵まれた時、海谷会長は「クプアスーやアサイなど熱帯果実の栽培、加工を手がけています」と活動を報告し、ご訪問をお願いした。
その時を振り返り、「もちろんお返事は頂けなかったけど、トメアスーと聞いて『ピメンタのですね』とおっしゃられた。両陛下もトメアスーのことは気にかけて下さっていた」と残念そうにのべた。
アマゾン地域の連合会、汎アマゾニア日伯協会の堤剛太事務局長も、「アマゾンの声は届かなかった、ちょっと軽く見られた感じがする、そんな程度にしか思われていないのか、などと言っている人もいる。ここの移住者はアマゾン開拓を成功させた矜持を持っているから」と落胆した現地の声を代弁した。