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「危機だから打って出る」=150億円をブラジルに投資=創立50周年の南米安田=佐藤本社社長ら来伯

ニッケイ新聞 2009年6月4日付け

 今年創立五十周年の節目を迎えた損保ジャパングループ・南米安田保険(米倉立二郎取締役社長)は、金融危機にひるむことなく百五十億円もの巨額投資を行い、ブラジル大手保険会社マリチマ・セグーロ社の普通株式の五〇%を取得すると先月末に発表した。BRICsの雄に成長した有望市場・ブラジルでの半世紀を祝い、三日にサンパウロ市で開催される創立記念式典に出席するために、本社の損害保険ジャパンの佐藤正敏取締役社長、大岩武史取締役常務執行役員、奥村幹夫経営企画部課長らが来伯した。

 五月二十日、損保ジャパンはブラジル大手保険会社マリチマ・セグーロ社の普通株式五〇%を、子会社南米安田社を通し取得することに合意したと発表した。
 「危機にひるんではいけない」。金融危機が起きてすぐの昨年十月、佐藤損保ジャパン社長が来伯して投資先を視察、今回の百五十億円もの出資を決断した。
 マリチマ社は一九四三年に設立し、総資産は十億三千九百万レアル。約千三百人の従業員数をもつ収入保険料規模ブラジル第十位。独立系資本の保険会社として約一万三千の仲介業者や銀行窓販など強固な販売網を持つ。
 株式を取得した南米安田社は総資産三億八千九百万レアルで、資産規模でマリチマ社の半分以下。「自分の体より大きいのを飲み込んだ蛇みたいでしょ。ブラジル市場は儲かるんですから、もっと前からやりたかった」と米倉南米安田社長は豪快に笑う。
 今回の出資は、同社グループによる海外の保険会社への出資として過去最大規模となる。
 南米安田保険は従業員数約三百四十人、マナウス、ベレン、サルバドールなど九支店、一千店の代理店舗を設ける日系保険会社。一九五九年五月にブラジルで創業し、今年五十周年を迎える。
 取引内容は四割が自動車保険、三割が運送保険、二割五分が火災保険となり、日本企業、駐在員、ブラジル企業、ブラジル民を対象に幅広くサービスを提供している。
 かつて南米銀行が同社株式の半分を持ち、同行支店網を通じて保険を販売していた関係から、九八年に同行が吸収合併された時は、「大きな転機だった」と米倉社長。自社株を買い取り、一般社会向けの販売に重点を切り替えるなどの方向転換を行い、現在の隆盛につながったと振り返る。
 損保ジャパンの海外拠点中でも、ブラジルの拠点は最も歴史が長く、成功している拠点だ。去年は米国拠点を抜き最大の収入を上げた。ブラジルの保険市場は、〇八年度元受保険料は対前年比で約一六%増収。今後も成長が見込まれている。
 「南米安田社には、日系としてのブランドがある」と米倉社長は胸を張る。「迅速、正確にサービスを提供できる点で信頼できる保険会社のイメージを保ってきた」。
 損保ジャパンは〇二年七月安田火災と日産火災が合併して誕生。同十二月に大成火災が合流。資本金七百億円で一八八八年に創業してから、国内営業拠点五百三十七店、海外二十六カ国四十二拠点へと広げてきた。
 損保ジャパンは、金融危機が続く中、経済回復力の大きい伯印中に注目する。今回の出資にあたり佐藤社長は、「日本全体が縮こまっているが、金融危機の今だからこそ逆に打って出なければならない」と意気込む。
 さらに、「五十年間もブラジルで経営できたのも日系社会が支えてくれたところが大きい。今回のブラジル企業との提携を機に我々も日系社会を支えていきたい」と感謝の気持ちを語った。