ニッケイ新聞 2009年6月3日付け
【神戸新聞】ブラジルの労働風景を描いた銅板レリーフ二作を、神戸市垂水区千鳥が丘二の嬉野瑛子さん(74)が、三日に開館する同市中央区山本通三の「市立海外移住と文化の交流センター」(旧神戸移住センター)に寄贈した。いずれも日本人が移住したころのブラジルの世相を映した作品で、嬉野さんは「移民の人たちには大変な苦労があったはず。少しでもブラジルのことを知ってもらえたらうれしい」と話している。
嬉野さんは、佐賀県内の調理専門学校で講師をしており、一九八七年に日系ブラジル人の女子大学生に料理を教えた縁で、以後、日系ブラジル人と交流するようになった。八八年には、移民八〇年を記念にブラジルのサンパウロを訪れた。
その際、銅板レリーフ五点を購入。うち一点を昨年五月に知人で材木会社を営む井上豊さん(67)に譲ったところ、井上さんが、同センターへの寄贈を提案した。今年一月、名古屋の知人の手に渡っていた作品も取り寄せ、併せて展示することになった。
寄贈したのは、砂金を採掘する労働者を描いた作品(縦八十五センチ、横百七十二センチ)と、コーヒー農園での作業風景を表現した作品(縦九十三センチ、横百八十八センチ)。作者名や制作時期は分かっていないが、井上さんは「コーヒー栽培などに従事していた移民たちの暮らしを、ほうふつとさせるような作品」と話す。
寄贈にあたって、井上さんはアマゾンのジャングルをイメージした額縁を制作。白い木肌が紫外線を浴びると赤く変色し、情熱的なブラジル魂を象徴する名木「パープルハート」を使用した。「ブラジル人の魂の木と銅板レリーフを多くの人に見てもらいたい」と話している。
銅板レリーフ二点は、同センター一階のフリースペースに展示されている。(大月美佳)