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法律できても続く伐採=大西洋沿岸森林は絶滅間近=原生林は11%を残すのみに

ニッケイ新聞 2009年5月28日付け

 「マッタ・アトランチカの日」にあたる二十七日、大西洋沿岸森林地帯とも呼ばれる同地域の〇五~〇八年の森林伐採面積は一〇万二九三八ヘクタールに及び、原生林は一一・四一%を残すのみと伯字紙が報じた。
 報道されたのは、国立宇宙調査研究院(Inpe)と非政府団体(NGO)のSOS・マッタ・アトランチカによる調査報告。〇六年に公共工事に伴う伐採以外は基本的に伐採を禁じるという法律承認後も、同森林地帯では、年三万四一〇〇ヘクタール余りの伐採が続いていることになる。
 南大河州から北大河州に及ぶ大西洋沿岸森林地帯は、ポルトガル人到着当時一億三一〇〇万ヘクタールあり、ダーウィンら多くの科学者が注目した生態系豊かな地域だ。
 ところが、急速に進む開発で、生態系豊かな森林地帯は絶滅の危機に直面。二〇〇〇~〇五年の年三万四九〇〇ヘクタールよりは減速したとはいえ、森林破壊継続で、本来の植生を残しているのはわずか一一・四一%になってしまっている。
 今回の調査では原生林が残る一七州中一〇州での統計が報告されたが、鉄鉱業界で使用する炭作りなどで、〇五~〇八年に伐採最多となったミナス州では、三万二七二八ヘクタールを喪失し、残る原生林は一〇%のみ。
 三月三十一日に水源地や河川隣接の伐採禁止地域縮小を認める州条例認可のサンタカタリーナ州は、二万五九五三ヘクタール喪失。州全体が同森林地帯に属しながら残る原生林は二二%だ。バイア州も二万四一四八ヘクタールを喪失した。
 一方、一一・四一%残ると報告された原生林は三ヘクタール以上のもので、一〇〇ヘクタール以上の原生林は七・九%の一万四八〇〇ヘクタールのみ。面積が小さいほど動植物の生態系を保つのが困難となり、火事や外来種の侵入、農薬被害などの影響による消失の可能性も高まるという。
 また、原生林や再生林減少は、水源枯渇や地盤強度劣化、温暖化にも直結。植林で水源が復活したサンパウロ州カンタレーラの農場例などもあるが、官民一体の管理・指導、対策抜きでは、世界有数の豊かな生態系を誇る森林地帯消滅と天災被害拡大は不可避な状況といえる。