ニッケイ新聞 2009年5月22日付け
下院は二十日、離婚の法的手続きを簡略化する連邦令補足案を賛成三百七十四票、反対十五票で可決と二十一日付けフォーリャ紙が報じた。現在は離婚が法的に認められるのに、別居手続きを行なって後一年経過、または実際に別居して二年後となっている。同案はまだ上院の審議を受けるが、両院で承認されると別居した翌日に離婚手続きが可能になる。宗教界は、火消し役の裁判所が火に油を注ぐと批判した。
下院は二十日、離婚を容易にするため婚姻の法的解約を廃止する法案を承認。別居後二年経過を、翌日と改定した。同案が発効するために下院でもう一回、上院で二回表決を行なう。
ブラジルの婚姻法では長い間、離婚が認められなかった。一八九〇年にカンポス・サーレス法相が同法に離婚を盛り込む案を初めて上程し、否決された。一九一六年離別が認められたが、離婚は死後のみとされた。それでも離別は、不倫や名誉毀損、扶養放棄、虐待の場合のみに限られた。
一九七七年に初めて離婚が認められたが、別居後三年以上経過していること。しかも一生に一回だけ。一九八八年に現行法が制定された。
マルコス・ケザード氏(四六)の場合、十三年間続いた結婚生活に終止符を打った。しかし子供の養育上、同居しながら一年以上夫婦関係がないケースもある。夫婦間の悩みを説明しても、子供には理解できない。後戻りは不可能で、どっちつかずの夫婦は多い。
殆どは別居手続き中で、離婚に至ってないのが実情。別れた二人は新しい人生を歩み出しており、今更過去を思い出したくない。しかし、同案は家庭崩壊につながり、安易な離婚は野合を招くという意見がある。
離婚には無数のケースがあり、合意と訴訟の道は残されている。ブラジル地理統計院のデータによれば二〇〇七年、十五万二千二百九十一件の離婚があり、六九%は裁判を経ずに別れた。
裁判所の判事らは、同案に賛意を表した。現行法は、再婚の邪魔をするだけと見ているからだ。
一方、CNBB(全伯司牧協会)のオルランド・ブランデス枢機卿は「感情が高ぶっている時は誤った判断を下し易いから、行動を慎むよう助言すべきだというのに、何と言う法律だ」と批判。離婚を防ぐための和解の可能性を探る機会を失うことになるからだ。