ニッケイ新聞 2009年5月19日付け
世界保健機構(WHO)は新型インフルエンザの警戒レベル6への移行を十八日に再度見送ったが、呼吸器系疾患の国内監視体制は不十分との記事が十七日付エスタード紙、また、デング熱流行と地域の保健管理体制の問題についての記事が十六日付エスタード紙に掲載された。
新型インフルエンザ真性患者は八人に止まり、保健相も態勢は万全とする一方、国内医療体制の弱点を露呈する記事だ。
まず、〇八年統一医療保険システム(SUS)統計で、呼吸器系疾患による入院患者は最多の一三〇万人。風邪による入院は二万七三〇〇人、死者七五三人の報告もあるが、SUSでの呼吸器系疾患実態集計は年一度。原因解析も不十分で、コレラなどの流行を防ぐため週毎に集計が行われている下痢に比べ、監視体制がかなり手薄だ。
そういう意味で、新型インフルエンザ治療に五二の医療施設を指定し、爆発的な感染を阻止できているのは、保健省を頭とした管理、抑制態勢が機能しているといえる。
一方、管理、抑制態勢にばらつきがあり、保健当局の間隙をついた形で流行したのがデング熱。
〇八年に大流行が起きたリオ州では九六・八%減など、全国では四月三十日までに四九%減少した患者が、バイア州の五万六一三五人(前年比二二六%増)を筆頭に、ミナス四万一四三九人(一四%増)、エスピリトサント二万九六五三人(九八%増)、アクレ一万五六八六人(一一八四%増)、マット・グロッソ一万一一四〇人(二八%増)など、八州で増加。全国患者二二万六四一三人の七八%を占める上、死者八九人で致死率六%はWHO基準の六倍だ。
感染拡大地域では、市長交代で地域医療管理体制に緩み、病理検査資材運用不適切、貯水槽の蓋が無くボウフラ大量発生などの問題も出ている。
その意味で、地域密着型の予防医療、地域住民の意識昂揚に繋がる家族保健システム徹底が必要だが、全国九四%の市町村に導入された同システムの恩恵に預かっている住民は五〇%以下だ。
新型インフルエンザ拡大の可能性が指摘される冬以前に、予防と治療両体制の全国的な見直しはできないものだろうか。