ニッケイ新聞 2009年5月13日付け
今回は日本政府の英断と言っていいのではないか。弊紙がまっさきに問題として取り上げ、施策が正式発表された先月には日伯両国メディアはもちろん、ニューヨークタイムス紙でも扱われた再入国制限のある日系人帰国支援策に関し、「三年間」を目処とする方針を十一日に打ち出したのは、素早く柔軟な対応であった▼通産大臣の時(八一年)に訪伯してカラジャス産鉄鉱石一千万トンの購入契約に調印した田中龍夫代議士の後継者が、この対応を発表した河村建夫官房長官だ。民主党からの代表質問により、「特に日系人の皆さんからブーイングが出ていると聞いた」と明らかにし、ブラジルに駐在経験のある麻生太郎総理からも指示を受け、期間の明示を判断したという▼なんの因果関係もないが、弊紙刊行の写真集『百年目の肖像』が、この対応が発表された一週間前、今月一日に二人に謹呈された。忙しい国会日程の最中とはいえ、昨年六月の訪伯時の様子も写っている百周年の写真をパラパラとめくりながら、多少なりとも感じるモノもあったかもしれない▼ちなみに、この日系人支援策を取りまとめたのは小渕優子内閣府特命担当大臣らのチームであり、父・小渕恵三元総理は学生時代にサンパウロ市に長期滞在したことはもちろん、外務大臣として来伯した縁の深い政治家だ▼日本が大不況に直面する時に、この陣容の政治家が日系人施策に当たっていることは日系社会にとっては僥倖かもしれない▼デカセギが開始して二十年以上たつが今回ほどの総合支援策は初めて。それ自体は高く評価されるべきだ。一部の内容で大騒ぎになったのはある意味、不幸だった。(深)