ニッケイ新聞 2009年5月8日付け
ノーベル経済学賞の受賞者エドムンド・フェルプス博士(米国人)は六日、サンパウロ市で開催された第二回「情報と持続性」に関する国際フォーラムに招かれ、ブラジル経済が今後採るべき方策を提言と七日付けエスタード紙が報じた。同博士は、ブラジルが金融危機脱却に先鞭をつける国の一つと見て「国際経済は、回復に向け第一歩を踏み出した兆候がある。しかし、この回復は以前のような流通量の垂れ流し状態へ引き戻すものではない。国際経済の牽引は、ブラジルと中国がリードする」と述べ、以下のような自説を講演した。
ある国々は全部ではないが、一部分野の経済指数が好転しているので、国際経済回復の兆候が確認できるという。好転は徐々に、全般へ波及する。だから今回の金融危機を経済停滞につながる不況と位置付けるのは誤りだと指摘した。
人類は同じ過ちを繰り返すことはないから、回復可能な不況という。個人的な見解だが、米国など回復の半分を達成と見ている。しかし、深手を負って不況以前の状態へ復帰できない国もある。例えば雇用の回復だ。
苦境脱出でトップを切るのが中国、続いてブラジルとインド。米国は遅れをとる。EUは、さらに後方にいる。国際経済の選手が、交代する趨勢にあると述べた。
「コモディティ市場の相場は回復しつつあり、さらに高騰を続ける。ブラジルの輸出が、唸りを立てて再開する。ブラジルの未来は輝いている」との観測をならべた。
経済の国際環境は今後、世界的な政策金利の上昇が起き混乱する。中央銀行は通貨政策で、難問に遭遇する。中銀はインフレ抑制の金利引上げを採るか、景気回復のための低金利政策を採るかの板ばさみが、さらに熾烈になる。
消費者は、ローンの暴騰に驚く。通貨政策に失敗する国は、インフレの悪夢再来に悩まされることになる。
ラテン・アメリカ諸国は今、全般に政策金利を引き下げ、経済が好調に滑り出している。ブラジルに続きチリやコロンビアが、来る数年有望だ。
活気のある国々に囲まれることは、好運を呼ぶ。同博士は「好調な経済の波に乗っているブラジル産業界の人に、東欧やアフリカ視察を勧める」と中国の次の市場として提言した。