国立保健財団理事長=「死者はたったの68人」=サンパウロ市での財団ビル占拠絡みで=州担当者退陣求める先住民
ニッケイ新聞 2009年5月8日付け
サンパウロ州の保健管理業務責任者退陣要求のため、五日にサンパウロ市セントロの国立保健財団ビルを占拠した先住民は、六日夜、同ビルから退去したが、要求達成までビル前での座り込みを継続する意向だ。
六日、七日付伯字紙によれば、事件発生は五日正午頃で、ビル内に居た職員等約八〇人が監視下に置かれた後、五人の役員が人質となった。
ビルを占拠した先住民は五〇人とも一〇〇人ともいうが、彼らの要求は〇七年からサンパウロ州の保健管理業務責任者となったラゼ・レゼッキ氏の退陣。同氏就任以降、先住民への十分な対応がされておらず、保護区内の上下水道処理の不備で感染症も増加など、保健サービスの質は低下し続けているという。
レゼッキ氏退陣要求はこれまで何度も繰り返され、同氏自身も〇八年に辞表を提出しているが、財団理事長が受理を拒み、現在に至っていた。
財団ビル占拠時に不在だったレゼッキ氏は、数時間後に連邦警察警部らと共に現場に着いたが、先住民らはレゼッキ氏と警部のみを招き入れ、退陣要求を突きつけた。
五日の交渉ではレゼッキ氏が財団理事長に再度辞任を求めると約束し、人質も開放されたが、占拠は六日夜まで継続。
先住民退去時のビル周辺は連警が取り囲み物々しい雰囲気だったが、裁判所の退去命令に従った先住民達は無血開城。ただ、六日の財団理事長の会見ではレゼッキ氏退任は明言されず、先住民達はビル前での座り込みを継続する構えだ。
また、同会見で財団理事長が「五〇万人の先住民に対し、死者はたったの六八人」と発言をしたことは、Cimi(インジオ宣教師協議会)関係者の反発も招いた。
〇八年には先住民向け保健サービス予算の内一八〇万レアルが未消化で国庫返還という状況下、Cimiの実態調査担当者は、死者六八人中三七人は子供で、「サービス低下で生活の質低下や命の危険にさらされている先住民は四〇〇〇人もいる」と抗議した。
占拠事件は、上下水道設備や医師派遣、患者搬送、医薬品供給など、先住民向け保健サービスの全責任を負う財団担当者の意識のあり方も含めた問題を露呈したようだ。