ニッケイ新聞 2009年5月7日付け
南米十二カ国が二〇〇〇年に合意した大西洋と太平洋を結ぶ大陸横断道路(Iirsa)協定は四日、二〇一〇年の完成を目指してアクレ州アシス・ブラジル市とペルーのサンフアン・デ・マルコナ港間七百六十二キロメートルの最終工事に着手と五日付けヴァロール紙が報じた。
ブラジルの主要輸出国が米国から中国へ移ったことで、生産物の太平洋岸積み出し港がクローズ・アップされている。砂漠と密林を貫く人跡未踏の同建設地域は、槌の音で雰囲気が一変。地域経済も潤っている。
大陸横断道路は、五ルートのバイパスも含めて全長二千六百キロメートル。現地は標高四千七百米のアンデス山系を貫き、夜間は氷点下二十度にもなる。ソロチ(ゆっくり歩き少し食べ、夜の楽しみは禁止)という難行苦行の地でもある。
同道路が完成すると、サンパウロ市からペルー太平洋岸までトラック輸送で十日間。船舶輸送なら、サントスまたはパラナグアからパナマ運河経由またはビーグル海峡経由で、ペルー太平洋岸まで三十から三十五日かかる。
工事を落札したのは、ブラジルのオデブレヒト建設が七〇%出資する現地企業との合弁会社。工事は道路と港湾建設、灌漑設備、水力発電所に十億ドルを投じて、二十五年の管理権が与えられる。資金融資は、メリル・リンチ投資銀。
これまでペルー領の道路網はアスファルト舗装がないため、雨が降ると交通止めとなり再開の見込みが立たない。それに食料などの現地調達は不可。標高が高くなると、酸素と水が不足。
現地人は苛酷な自然条件に慣れているが、ブラジル人には難行の地であった。そのため自然条件に制約される地域の通過時間が制限された。
ペルー領内の道路が舗装されると、ブラジル資本が同国の農業へ投資され、大量の農産物がアジア向けに輸出される。ブラジル資本と技術による観光資源や地下資源の開発インパクトは大きい。