ニッケイ新聞 2009年5月6日付け
サンパウロ市証券市場(Bovespa)は四日、株価指数を六・五九%上げ、昨年九月のリーマン・ブラザース投資銀行破綻で金融危機が泥沼化して以来、初めて五万ポイントを回復したと発表したことを五日付けエスタード紙が報じた。昨年十月二十七日には過去数年で最低の二万九千ポイントに落ちたが、四日現在で七一・二三%回復し、コモディティ需要拡大に伴う外資復帰を示している。国際金融市場で誰も予想しなかったブラジルが、金融危機からの蘇生で先鞭をつけたことになる。
金融危機直前の昨年九月一日は五万五千ポイントだったので、今回の回復で同水準近くまで戻したことになる。
昨年下半期以来、意気消沈していた証券市場に活気が蘇ったことから、ブラジルが国際金融市場でけん引車の一つになるという見方が強まった。こんなに早く復興するとは、楽観主義者さえも予測できなかった。
四月の株価上昇率が一六%、一月からの合計で三四%という数字が注目を引いたようだ。ブラジルに、千載一隅のチャンスを見出した。世界中どこを見ても今ごろ、こんな美味しい話はない。年内の売りが合計で四十五億レアル、それに対し四月の買いが三十一億レアルも上回った。
ファトール銀行のジョゼ・ゴンサウヴェス経理主任が「ブラジルの魅力は健全な国内市場を有し、金融危機によく耐えたこと。恐慌の中でも高度成長を保つ中国という顧客を持っていること。堅実な経済基盤を投資家が見ている」という。
ブラジルにとって朗報がもう一つ。アジアが恐慌を克服するのではないか、という予測。中国では政府の不況対策に結果が出始め、八カ月続落した工業生産が四月に底打ちした。ブラジルから鉄鉱石と原油を大量に買い付ける中国の経済復興は、ブラジルに直接恵みをもたらす。
ブラジルが安定したコモディティ供給国として信用されていることを知っている外国人投資家は、当然、ヴァーレ株やペトロブラス株のような世界的な銘柄株を買い付けにやってくるからだ。
しかし、同経理主任は「世界の金融システムは、米国の金融システムによって支えられていることを忘れてはならない」と釘を刺す。米政府は七日、主要十九銀行のストレス状態を発表する。米メディアの下馬評では、どこも資金不足のようだ。
このような環境の中で、ブラジルの証券市場が意気軒昂なのは結構なこと。株価指数の上昇はまだ続き、程ほどの利益も上がる。しかし、同経理主任は「心配なのは流通量が取引高に比例して増えるか。短期間に大量の資金が流入するかは、しばらく様子を見なければ分からない」と注意を促している。