ニッケイ新聞 2009年5月1日付け
日本政府が打ち出した日系人帰国支援策のうち、ビザ制限の部分が日米伯で批判を受けているが、言い出しっぺの一人として正直言って少々複雑な思いだ。いろいろな声を聞くからだ▼日本在住のデカセギが主役の話であり、彼らがどう考えているかが本来最も重要だ。彼らが「どうでもいい話」と考えているのであれば、メディアが政府を批判したところで独り相撲だ。そこで、日本在住者の一般デカセギの声を何人か聞いてみたが「あまり関心がない」との雰囲気を感じた▼というのも、ある程度、日本定住を考えているデカセギにとって、将来に向けて貯蓄するのは当然のことだ。だから危機に際して帰伯する費用もないような人は「稼いだ先から浪費するような、自分たちとは違うタイプ」であり、そのような人々に向けた施策がどうであっても関係ないということらしい▼先日東洋街である派遣会社社長と話していて、「昔は純血二世ばっかり送っていたから、旅費を立て替えてもきちんと返してくれたが、今はひどい。メスチッソや片割れが非日系というのばっかりだろ。その部分だけ見たら三割ぐらいが踏み倒していた」という。「とにかくひどいのが日本に行ってるから、そんなのが日系人のビザが取れなくなってもしょうがない」という意見だった▼それらは現実論として説得力があるが、移民政策研究所の坂中英徳所長の憲法違反という論ももっともだ。「無効化」という議論は乱暴すぎると思うが、「〃時限的〃ではなく三年とか年限を明示する」「三十万円を返したらビザを取れるようにする」などの補完的処置は少なくとも必要ではないか。(深)