ニッケイ新聞 2009年4月23日付け
インターネットを使わない読者にはちょっと失礼、「ブラジル」と検索すれば、昨年は百周年のことが出てきたが、年末から今年にかけては不況に喘ぐ在日ブラジル人の話題が多いことにお気付きだろう。日本の記事中、北米の移民史研究者や、ブラジル日系社会におよそ造詣深からぬ御仁のコメントに首を傾げることも▼日伯間の温度差は色々な面で出てきているし、これからもそうだろう。両国でお互いのことをよく知らないまま、何かを模索しているような気がずっとしていた。そこで本紙では、両サイドに上がってもらう土俵を設けようと企画した▼今週二十五日から毎週土曜日に掲載する『日伯論談』がそれだ。日本とブラジルの有識者に交替で両国間に横たわる様々な事象を論じてもらい、本紙サイト・メールマガジンで公開する。最初のお題は、入管法改正二十周年を見据えた「デカセギ」だ。日本語での寄稿はポルトガル語に、ポ語は日本語に翻訳する。ポ語版「ジョルナル・ニッパク」にも同日掲載、コロニア全体で考えていきたい。「論壇」といったかしこまったものではなく、談論風発となって欲しい思いから「論談」とした▼第一回目はサンパウロ人文科学研究所の宮尾進顧問。初期日本移民と在日ブラジル人社会の違いを分析、コロニアが何をすべきかを論じる。二回目は武蔵野大学准教授アンジェロ・イシさん。続いて、帰伯デカセギ子弟問題に詳しい心理学者の中川郷子さん、朝日新聞元サンパウロ特派員で、帰国後もデカセギ取材を続ける石田博士さんを予定している。百一年目のコロニアを取り巻く状況を記録するのも趣旨としたい。ご期待下さい。 (剛)