日本最大の日系ブラジル人集住地・愛知県の弁護士会国際委員会から10人が先月25日に来伯し、サンパウロ市を中心に日系団体や司法機関を訪れた。この視察結果を在日日系人への対応および、今後増えると想定されるブラジル進出企業の支援に活かすという。同弁護士会には会員約1700人、国際委員会には約100人が所属する。国際関係の事件や外国人事件を数多く取り扱っており、海外視察に毎年赴くという。
同委員会に所属する大嶽達哉さんが2012年にCIATE(国外就労者情報援護センター)の専務理事に就任したこともあり、初のブラジル視察が実現した。同弁護士会会員には日系ブラジル人支援に熱心な人が多く、小川晶露代表によれば「我々の業界で1週間の休みを取るのは大変難しいが、10人も集まって驚いた」というほど関心が高かった。
また、小川代表は「特に四世は入管法の立場が不安定なので、定住ビザが取りにくい」と指摘する。在聖総領事館に問い合わせた所、たとえ日本で生まれ育っても、成人後親の扶養を離れて無職になった場合やビザの更新が遅れた場合、刑事事件で有罪判決を受けた場合などは、強制退去の対象となる。
また成人した四世が再入国許可を取らずに帰伯したり、国外滞在中に再入国許可が切れてから日本に再入国する場合、非日系ブラジル人と同様の扱いになる。二世や三世と異なり、「四世であること」が在留資格を保証しない不安定さがある。
在日日系人には「就業もしない学校も行かないという、中ぶらりんの人が何人もいる」という印象のようだ。滞在資格に問題が起きた場合、在留特別許可を申請するなど方法は限られている。弁護士に法律を変える権限はないため、「運用」で事実上、滞在させるのがやっとのようだ。
08年のリーマン・ショックにより、10万人近かった日系ブラジル人の人口は約5万人に半減したが、不就学児童や労働問題、ビザ切れ滞在などの問題が依然継続している。相談件数そのものに目立つ増減はないが、「以前に比べ、質が変わってきた印象。景気が悪くなるとレイオフされる一番のターゲットなので、特に労働問題が増えている。入管問題、離婚時の親権問題も多い」と明かした。
同月26日には愛知県人会を尋ね、沢田功会長、小松ジェニ、林アンドレー両元会長の3人と1時間程度の交流を行なった。3人が県人会の成り立ちや存在意義、日系社会の現状などを説明、留学・研修制度による日伯交流の重要性などを伝えた。一行は熱心に耳を傾け、「愛知で長く働いた他県系人は会員になれるのか」「日系人は日本の風習や価値観を今ももっているのか」などと質問し、日系社会の現状に関心を寄せていた。
小川代表は「ブラジル側窓口が決まれば何らかの形で交流を続けていきたい」と話した。