ニッケイ新聞 2009年4月14日付け
サンパウロ州立大学(Unesp)の農地改革プロジェクト調査班の地理学者エドゥアルド・ジラルジ氏は十二日、ブラジルの農業が適作地を求めて転々とする移動農業であり、未だ伝統的習慣の土地係争を余儀なくされるとする博士論文を発表と十三日付けエスタード紙が報じた。農地改革から三十年を経た現状を評価するもので、ブラジルは地域によって高度の資本主義による技術集約化と所得の偏在が進み、他方では労働集約化による前時代的な真空地帯が存在している。農業の中にもハイテク化と単なる土地所有だけの非生産者という二極化が存在すると報告した。 法定アマゾン地域で過去十年、パラナ州に匹敵する二千三百万ヘクタールが開拓され、所得と技術、人材の大移動があった。同時期に農地改革で三百二十万世帯が入植し、百五十万世帯が失職のために土地を去った。
人口分布図を作成して判明したことは、ブラジルの人口は三十年前、海岸地帯に四四%が密集していたが、今は八・二%に減った。七八%が、土地を求めて小農へ転向したらしい。
ブラジルで農地改革とは、農地所有権問題から取り組まねばならない。農地の寡占化は過去十年、MST(農地占拠運動)が考えるほど進んでいない。農地寡占化は、地方自治体の政治的問題といえそうだ。
農地改革は一九七九年からこれまで、何らインパクトを起すことはなく、政策的に失敗であったようだ。州知事らは、社会的反発と土地係争を懸念して農地改革に関心を示さなかった。
農地改革は北部にだけ集中したので、MSTは中央西部と北東部で農地改革を行うよう同地方を狙って活動を集中した。軍政時代に中央西部は聖域とされ、農地改革をさせなかった。農地改革が北部に偏重したのは、僻地開発の政治的理由からであったようだ。
農地改革に関する他のグループは、北東地方など政治的に複雑な問題が絡む地域の農地改革を制限するよう提言した。また農業技術という文化が不在な地域の場合、農民に農地を与えて入植させても失敗するという。
北東地方の農地改革には、農業の行政介入による指導なくして地域社会の発展はないという見方だ。南部地方の農業生産者とは、全く質が異なる。アグリビジネスという文化は、殆どない。
労働者の奴隷的使役は、地域全体がタコベヤになっているからだという。手に職もない無学の人間が、それから逃れるには故郷を捨て、町で路上生活をするかスラム街に身を寄せるしかない。