ニッケイ新聞 2009年4月10日付け
マンテガ財務相は八日、政策金利を下げてもスプレッド金利(資金調達金利と顧客への貸し出し金利差)が下がらないため、ブラジル銀行のアントニオ・F・リーマ頭取をアウデミル・ベンジーニ副頭取に交代させると発表したことを九日付けエスタード紙が報じた。前頭取は市中金利の引き下げ努力が緩慢だったと政府関係者が評した。ジウマ官房長官が、公銀幹部は営業成績のみならず、政府の方針にも配慮する必要があると通告した。同人事で銀行は、これから政治の道具になると業界が懸念している。
市中金利の抑制で政府は長い間煩悶し、ブラジル銀行頭取を辞任に追い込んだ。同行はこれから金融活動から政治活動へ振り回されるとして、同行株は八日に八・一五%も下落した。
前頭取辞任の理由として政府は、融資コストの引き下げで努力不足を指摘した。しかし、野党は金融危機における中小銀行の救済で不都合があったと見ている。説明も理由もなく頭取を追い出したことで、議会は真相究明を求めている。
野党は政府が何かを企んで、前頭取を生にえにしたと見ている。金融危機の折、中小銀行が抱える債権引き取りに際し、公銀は法外に過少な低利を課した。この措置に前頭取は、政府方針の非を指摘し財務相の反感をかった。黙認した連邦カイシャのコエリョ頭取は、無傷で済んだ。
中小銀行の問題は流通量ではなく不良債権の処分であり、それを政府が買い取ることに異を唱えたのが前頭取であった。不良債権と知っていて買い取る裏に、何かがあると野党は睨んでいる。
前頭取本人は、議会で個人の尊厳と身の潔白を証明する用意があると強調した。財務相は同行内で他の重要な任務へ栄転するための人事だと説明したが、降格とされたのは確かのようだ。
ルーラ大統領は八日、労組代表と会合。スプレッド金利は、政府に取りついた悪霊だといった。官房長官は、公立銀行が民間銀行並みの仕事をすることを叱責した。前頭取と財務相の考えに、大きな差があった。引き続き前頭取の側近も、芋づる式に辞任に追い込まれるようだ。
新しく就任した新頭取は、同行でクレジット・カードの担当であった。同カードは金融危機の間、高利を徴収し業界のひんしゅくを買った。新頭取はカード会社の代表なのか、市民代表なのか不明だ。これからも資金不足の波に乗って、カードは高利を徴収する。