ニッケイ新聞 2009年4月10日付け
ベネズエラは為替平行市場の盛況で、ブラジルの業者が大挙押し寄せていると三月三十日付けヴァロール紙が報じた。年間インフレ率は公定で三五%になり、公定ドルは二〇〇三年以来、二・一五ボリヴァルで固定されているために価値の差が開き、現在では平行ドルは公定の二〇〇%もの価値を持っている。
食糧はほとんど輸入されるため、闇市場には商品が溢れても、スーパーでは商品棚が空っぽだ。
市民の生活は、往年のブラジルを想起するようだ。給料は瞬く間に価値が下がる。エコノミスト誌は世界百三十二都市の消費物価を比較、カラカスはドバイやニューヨーク、ロンドンと並ぶ生活し難い都市にランク。
その中でブラジルの為替業者が、我が世の春を謳歌している。彼らにはインフレはビジネス・チャンスであり、インフレ様々だ。余裕資金を平行ドルに変換すれば、資産は自然に増える。
カラカスの為替平行市場は二十七日、取引を停止した。バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)の自動アラームが作動し、米政府はローズモント投資会社マイアミ支店の資産を凍結した。ここはカラカスの為替業者にとって活動拠点であった。
為替店四十九社は、同支店でベネズエラ保有の米国債を売り、ドル通貨を取得していた。凍結されたのは、不正送金とされる一億ドルであった。これは平行ドルを扱う業者の通常手段だ。
市民はインフレによる所得の目減りを、ストで訴えようとしている。チャベス大統領は、平行組合を多数設立して経営参加をさせることで、国民の不満を抑えようとしている。コカ・コーラの地所接収や亜製鉄のシドル国営化は、その延長線上の出来事といえる。
原油価格の低迷で悪化した政府財政を、同国政府は政府債務の増額と外貨準備高の切り崩しで突破しようとしている。ベネズエラの為替情勢は、しばらく収拾の目処がつかないようだ。