ニッケイ新聞 2009年4月4日付け
オバマ米大統領は二日のG20会議午後の休憩時間、ルーラ大統領に対し、並居る各国首脳の前で心情を吐露し「貴君は傑作な男だ。G20で兄に出会ったようだ。世界で最も慕われるカリスマ(大衆を魅了する天性を持った人物)で、私はこのタイプの政治家に心酔する」と絶賛したことを三日付けエスタード紙が報じた。この情景は直ちに、英BBCテレビを通じて世界へ放映された。その後一斉に各国首脳が、握手を求めてルーラ大統領へ押し寄せた。記念撮影では新興国代表の栄誉を授かり、エリザベス女王の隣席を賜った。
G20サミット本会議は、やり場のない憤懣を各国代表が抱えながら、異様な雰囲気で始まった。米大統領の提言は産業振興ばかり強調し、金融市場の統制に触れていないと非難が沸騰した。
ブラウン英首相は、ワシントンで開催された中道左派会議で決議された「世界新秩序」を提案した。また独仏両首脳がEUと米国の歩みよりで奔走したことを説明。
続いてルーラ大統領が「G20で初めて、新興国と先進国が対等に対話ができた。こういう機会が与えられたのは、恐慌によって世界各国首脳を動転させた金融危機のお陰だ」と揶揄して会議の流れを変えた。
ブラジルは十年前、IMF(国際通貨基金)から借金をしていた。それが今は、IMFへ金を貸そうとしている。ルーラ大統領は在任中「IMFへ一レアルでもいいから、出資した大統領になりたい」と夢を語った。
ブラジルにふさわしい出資額がどの位になるのかは、特別配当株の購入可否次第だとマンテガ財務相が説明。ブラジルの拠出資金は外貨準備高でなくても、IMFの特別貸し出し枠(SDR)からでも出せるという。
「ブラジルを債務国から債権国に換えた歴史に残る大統領とは、格好がよいではないか」と大統領が自讃した。ブラジルはこれまで、出資ではないが特別配当があるIMF株に四十二億五千万ドルを投資していた。
ルーラ大統領は在ロンドン伯大使館で「慢性借金国からの脱却」に祝杯を挙げた。労組時代は「IMF出て行け」と叫んだのが、ウソのようだ。大統領就任以前は左翼政治家で、就任後は右翼へと〃君子豹変〃した。
上機嫌のルーラ大統領は側近らに「オバマ大統領は、米大統領で唯一人の人間らしい顔をした大統領だ。ブラジルで出会うなら、バイアーノ(バイア州出身者)かと思う」と洩らした。