ニッケイ新聞 2009年3月24日付け
ピーター・メンデルソン英産業相は二十二日、ブラウン英首相とともに英経済使節団を引率して訪伯するに先立ち「ブラジルは国内にばかり気を取られ国外を忘れているので、欧州のレーダーに姿が見えない。ブラジルが国際経済の主役となるには、政治と経済の歩調が一致しないと投資を呼び込めない」と述べたことを二十三日付けフォーリャ紙が報じた。四月二日にロンドンでの開催が予定されている金融危機克服を協議するG20は、月並みな会議になる可能性があると警告した。
同英産業相による、いつも潜在的可能性にあまんじて、実際に世界へ勇躍しないブラジルへのメッセージの要約は、以下の通り。
【訪伯の目的】英国は対伯間に太いパイプを設け、投資と貿易で未曾有の大計画を持っている。しかし、英国の資本家は、ブラジルがどのように工業化を願っているのかよく分からない。英国はブラジルと合弁で、数々のプロジェクトを立ち上げる用意がある。
【BRICsの中のブラジル】中国やインドに比べて内気で政治では目立つが、経済では目立たない。省庁の連携プレーや外交政策では国際舞台の主役だが、ブラジルは経済で持てる力を出し切っていない。ブラジルが国際経済のけん引車となるため、必要とするものを英国が提供する。
【G20と妙案】G20に議題は事欠かないが、妙案がない。今のままではG20を開催しても実質的成果がない可能性がある。
【金融システム改革】G20を恒例行事にせず、恐慌再発防止のための国際経済の緊急対策委員会とする必要がある。現実に即したグロバリゼーションを推進する基礎機関を築かねばならない。
金融システムは急速に変化し、国際経済もそれに引きずられ変化した。この急激な変化に即応するのは難しかった。貿易分野にはWTO(世界貿易機関)があるが、金融や財政については調整機関がない。
【伯英首脳会談】伯英間には数々の共通点がある。両国は政治と経済で、ブロックのリーダーになれる潜在的能力がある。両国は、世界に訴えるだけの説得力を持っている。伯英両国は協調して連携プレーを取りながら、国際経済を牽引して行こうと提案した。
一方、既報のようにオバマ米大統領もルーラ大統領に、首脳会談で同じような提案をしたのは記憶に新しい。「両国は世界の指導的立場にあり、伯米枢軸を構築し連携プレーを」との提案だ。G20を目前に、英米を先鋒とするブラジル取り込み合戦は、さらに本格化するかもしれない。