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閉鎖型複合居住区がブーム=六本木ヒルズから発想=中だけで職・住・商が完結=生活スタイルに新現象か

ニッケイ新聞 2009年3月18日付け

 サンパウロ市南部カンポ・ベーロ区では、便利さと安全、快適を約束する閉鎖型複合居住区を次々建設中と十七日付けエスタード紙が報じた。これは、閉鎖型コンドミニアムの中に住居とビジネス、レジャー、ショッピングの四種の複合施設が完備され、外に出ずに「職・住・商」が完結するように企画されている。二〇一一年までに七件の四位一体プロジェクトが完成する予定。一方では、犯罪恐怖症の異常趣向とか厭世主義者のゲットーという批判もある。

 「鉄格子をはめた住宅からの解放」という業者のキャッチフレーズで、これまでの習慣を破った新しい生活スタイルの到来を暗示している。刑務所のような高い塀をめぐらし、無数の監視カメラが設置されている。
 カンポ・ベーロのプロジェクトは、発表して半年で七〇%が売れ、首尾上々という。安全と快適、便利、閑静、特権意識が売り物。総工費は二十五億レアル。アイデアは、日本の六本木ヒルズから導入したそうだ。
 自動車の渋滞にイライラしながら、出勤しなくてもよい。コンドミニアムの中の人間は、特権階級に属した気分。周囲にめぐらした七メートルもある塀の中は、別世界といえる。
 しかし、都市計画の専門家からは、ひんしゅくを買っている。かつて映画化されたニューヨーク刑務所都市のように、コンドミニアムの中に市民が住み、塀の外は全て刑務所という発想だ。
 サンパウロ市が刑務所都市になることはないだろうが、こんなコンドミニアムが林立したら索漠としたサンパウロ市になると都市設計家は想像する。国連の都市開発コーディネーターのジョナス・ラビノヴィッチ氏は「安全のためとはいえ、高い塀で娑婆との関係を断ち、必要なものを一切完備したゲットーを作るのなら、市にとっては良い事ではない」と批判する。
 バルエリ市のアウファ・ヴィレは、三十年前から四位一体都市だ。カステロ・ブランコ国道では、七百万平方メートルに城塞都市を造成する計画がある。どれも企画発表時で七〇%、八〇%が売り切れるらしい。
 サンパウロ州検察局は企画に際し、周辺へのインパクトを考慮するよう呼びかけた。現在この種の企画に対し、何ら規制がない。企画する企業のメンタリティは、全く問われない。このような企画が時代の波に乗るのは、社会格差が拡大し、二極化が進行していることを意味するという。