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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年3月18日付け

 国外就労者情報支援センター主催のデカセギ・フォーラムで、興味深い討論が行われた。二世エリートを代表する元サンパウロ州高裁判事の渡部和夫氏は「デカセギ子弟が日本で教育機会を失った結果、親同様に工場労働しかできない最下層となる可能性が高い。つまり新しい部落民となり、差別され続ける構造が日本社会にあるのではないか」と、日本の政治情勢に詳しい多文化情報誌『イミグランツ』編集長、石原進氏に質問した▼この質問に、石原氏は「差別されているというが、戦前戦後の朝鮮・韓国人への差別は比べ物にならないぐらい酷かった。ブラジル人はすでに百人が大学にまで達している。これからブラジル人は社会上昇するだけ。能力があれば、どんどん上がれる」との楽観的な見解を披露した▼加えて、二宮正人同センター理事長は移民史を振り返り、日本人初の大学卒業者は一九三二年の河合武夫氏で、笠戸丸から二十四年後だとし、「デカセギ開始からわずか二十年ほどで百人が大学に入ったなら、むしろ我々より先に行くかもしれない」との肯定的な可能性を指摘した▼一部が大学進学したとはいえ、現状では、デカセギ子弟の高校進学者すらごく少数だ。それどころか日語でもポ語でもまともに読み書きできないセミリンガル世代が大量に生まれつつあるとの指摘もあり、〃最下層の再生産〃という悪循環が起きているとの見方すらある▼このフォーラムを出発点とし、コムニダーデとして帰伯デカセギにどう対処するかが、今年最大の課題ではないか。特に帰伯子弟の教育問題は一日を争う。日系社会全体の評価を落とす問題になる前に対処すべきだろう。(深)