ニッケイ新聞 2009年3月17日付け
【既報関連】ペルナンブコ州の九歳女児の中絶後、現地大司教が関係者を破門したことが国際的な反響を呼び、十二日にブラジルの全国司教会議が、破門取消を発表。バチカンも十四日に、中絶への自動的な破門適用を否定する文書を発表した。
継父によって妊娠した九歳女児の命を救うための妊娠中絶なのに、中絶に関係した医師団や中絶を認可した女児の母に対し、オリンダ/レシフェ教区担当の大司教が破門を宣言したことは、国外でも報道された。
破門宣言に対しては、カトリックで中絶反対派の政治家達からも、女児やその家族への憐れみの情や具体的な支援姿勢のなさへの避難の声が出ていたことは、六日付伯字紙や七、十二日付エスタード紙などが報道。
継父は破門もされず、「中絶は姦淫よりも重罪」との発言まであったことで、妊娠させた男性は罰せず、被害者を助けようとした母親や医師団を破門した大司教には、メキシコのカトリック人権擁護組織も「憐れみのなさ」を指摘していた。
これに対し、バチカンからも破門を支持する発言が発表されたと、七日付エスタード紙や八日付アゴーラ紙などが報道。心有る人々が胸を痛める状況が続いていた。
この流れを変えたのが、十二日の全国司教会議議長らの記者会見。
この会見で、司教会議総書記が、「女児の母は娘の命を救おうとしたのであって、破門には該当しない」、「医師団への破門適用も適当ではない」との見解を発表。
「戒規適用には状況判断も必要」との発言に、カトリック教会の了見の狭さなどを感じていた人達は安堵したが、十四日にはバチカンの大司教も破門適用のあり方への批判と、憐れみの必要を説いたとの報道は十五、十六日付伯字紙。
被害者の心や体への配慮優先との考えが、中絶=破門という自動的戒規適用見直しにつながり、より柔軟な戒規適用基準を生む可能性を示唆する出来事だが、これは中絶全ての容認ではない。
中絶への罪意識と悔い改めを促すための破門との前提の下、教会や医療現場はこれからも常に、命を守り、救うための判断を求められていく。