ニッケイ新聞 2009年3月17日付け
国外就労者情報援護センター(CIATE)が主催する「在日ブラジル人に関するフォーラム」が十四日、サンパウロ市のニッケイ・パラセホテルで開催され、金融危機下で未曾有の大量解雇が続くデカセギの最新事情を知ろうと、約百二十人が集まり、熱心に質疑応答が行われた。午前九時半から午後七時過ぎまで五人の専門家らがそれぞれの見解を述べたが、あまりに山積する問題に会場からはため息が漏れていた。
二宮正人理事長は挨拶の中で今回のフォーラムを、「世界的な不況に襲われ、かつてない状況の中に在日ブラジル人は置かれている。続々と帰ってくる彼らにコミュニティとしてどう対応するかを考える第一歩にする機会に」と位置付けた。
日本ではこの半年間で八万人が職を失い、その多くがブラジル人といわれる。一昨年末で約三十二万人いたデカセギのうち、約二十五万人が就労可能人口であり、もし五万人が失業していれば二〇%だが、「はっきりした数字は分からない」。
昨年末に失業した人が受け取っている失業保険が三カ月間であることと、日本の会計年度末が三月なので悪化した企業の経営数値と共に更なる解雇が発表される可能性があり、「今月末が大きな節目との見方がある」という。
「計画性のなさがデカセギの最大の問題」と分析し、「子供たちがその犠牲になっている」と指摘。「帰伯するにしても二度考えてからの方がいい」と忠告した。
その上で、「帰伯するかどうかは、どう自分の将来を計画しているかによる。それがあるかどうかが全ての問題の根源だ」と総括した。
危機を受けて昨年末に帰伯した、滞日十五年の服部トニイさんは「日本には感謝している。行った甲斐があったが、まだ足りないとも感じる」と語り、景気が回復し次第、再訪日する意思があることを示唆した。
愛知県でブラジル人学校「コレジオ・ブラジル・ジャパン」を経営する篠田カルロス校長は、危機の影響で学費が払えなくなって生徒が減ったが、多くは帰伯したわけではなく自宅で引きこもった状態と指摘し、「昨年の入学生は八十三人だったが今年は四十五人しかおらず、うち学費を払えない生徒が十七人もいる」と訴え、「善意と決断力でここまでやってきたが、もう限界だ」と肩を落とした。
静岡県浜松市のカトリック教会で十五年間を過ごし、一カ月前に帰伯した比嘉エバリスト神父は、「日本で若者たちは大金を手にして野放しになり堕落する」との現状を語り、「間違っても叱る人はいない。親は仕事ばかりでいないも同然だから、人生の全てを道で友達から学ぶ。ドラッグも」と刑務所に収監された二十五歳の日系人からの手紙を紹介した。
多文化情報誌『イミグランツ』を創刊する石原進編集長(元毎日新聞副論説委員長)は、デカセギブームの発端となった八九年改正で九〇年に施行された改正入管法成立の知られざる内幕を披露し、「あの時に外国人受入れ態勢が十分に論議されていなかったから、二十年間も放置された」と分析した。
最後に、エスタード紙論説委員のオクバロ(保久原)ジョルジさんなども参加して座談会になり、充実した議論が交わされた。これらの内容は後日詳報する予定。