ニッケイ新聞 2009年3月11日付け
幼少時代に家族と共に移住、一九九〇年に日本へ帰国し、現在FIFA(国際サッカー連盟)公認選手エージェントとして、サッカーを通じ日伯の掛け橋となるべく活躍している男性がいる。木村精孝さん(48、千葉県柏市在住)だ。
現在、FIFAの認定を受けブラジルを専門としている日本人は、木村さんを入れて二人のみ。サッカー選手の移籍を交渉する代理人として日伯を行き来し、今回は一月に来伯、三月まで情報収集に走り回るそうだ。
二〇〇五年にエージェントの資格を取得した木村さんは、元ブラジル代表で日本でもプレーしていたセーザル・サンパイオさんと組み、現在送った選手七人がJリーグで活躍している。
「この仕事は営業マンと一緒。良いと思う選手の資料を集めチームに売り込む。タイプがぴったり合うことは少ないし、人付合いが難しい」というが、「自分が送った選手が活躍してくれると本当に嬉しい。クビになったときは夜も寝れないくらいだけど」と語る。
六九年、小学四年生の時に一家がブラジルに移住。父親はサンパウロ市ピニェイロスで日本料理店を開いていた。
木村さんは三十歳で帰国した後、神奈川県のチーム横浜フリューゲルスの通訳に応募したのがきっかけでサッカーの世界へ。
以降、日本生まれブラジル育ちのアイデンティティーを生かして十年間、ブラジル選手の通訳を経てエージェントとして独立したという。
日本が求める選手は、「日本のサッカーに合った選手。人間性も重要視され、選手を支える家族環境も要チェック」。いくら有能な選手でも、タイミングや環境が合わなければ、日本で活躍できるとは限らないという。木村さんの仕事は、千里眼が求められる。
今後は、プロ選手の卵を日本から呼び、武者修行を行うなど、様々な形で日伯交流を計画中だ。