ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 古くて新しい問題再燃=9歳女児中絶で破門騒ぎ=救われるべきは誰の命か

古くて新しい問題再燃=9歳女児中絶で破門騒ぎ=救われるべきは誰の命か

ニッケイ新聞 2009年3月7日付け

 ペルナンブコ州で妊娠判明の九歳女児の中絶処置関係者に、カトリック教会が破門処置と六日付伯字紙が報じた。
 ある意味、古くて新しい問題の再燃だが、二月二十八日付伯字紙によれば、女児の妊娠は三年前から同居し始めた継父によるもので、応じなければ「母親を殺す」と脅かされていたという。
 しかも、妊娠は四カ月で双子。一方、妊婦は九歳で一三七センチ、三三キロ。当初から妊娠継続は危険と見られていた。
 現行法では、婦女暴行と母胎の危険を伴う場合は中絶が認められるが、今回の中絶に対し、カトリック教会は、検察庁に訴えると脅してもいた。
 今回の破門処置は、中絶処置に関わった医師達や女児の母親が対象。性的被害にあった女性保護を重荷とする医師や非政府組織(NGO)関係者が女性の尊厳や妊婦救命を胎児より優先するのに対し、カトリック教会では中絶は殺人と考える。
 破門処置をとったオリンダ/レシフェ教区神父は、九歳女児の命が危険であっても胎児二人の命は救われるべきとし、「妊娠継続の危険性は中絶という方法を正当化しない」と弁明。ペルナンブコ州立大学が被害者女性の救済に関わり始めた九六年以来、同神父による破門処置は繰り返されているという。
 一方、カトリック教徒で女児中絶処置にも関わったリヴァウド・メンデス・デ・アウブケルケ同大医学部教授は、神の言葉を語りながら、被害者の現実に目をつぶる神父らのあり方を悲しむ一方、中絶を禁じたのは神ではなく教会と釈明。その他の医師やNGOメンバーにも、破門されたことを誇りにこそ思え、〃後悔〃の言葉はない。
 腹痛やめまいも栄養失調か虫のせいと思っていた母親が、父親の賛同を得られないまま中絶を認可したというほど切迫した状況下、母胎も双子も救うことが出来なかった時、神父らは何と弁明するつもりだったのか。
 新たに一一歳女児の妊娠判明の報道もある中、カトリック教会が重たい現実に直面する少女や家族に配慮せず、しかも、継父ではなく、中絶関係者だけを破門するあり方には、安息日に病人を癒したキリストの姿は教会の中に残っていないと別の批判も出てきそうだ。