ニッケイ新聞 2009年3月5日付け
広島修道大学で九六年から非常勤講師として、日本移民の歴史を伝えている小林正典さんが先月十七日に来伯、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイに四月中旬まで滞在、日本移民の調査を行っている。
ハワイ、ペルー、ブラジルなどの日本移民の歴史を個人でまとめた『日系移民・海外移住 異文化交流の今昔』を〇四年に発行、教科書として使用しているが、「書いた当時とかなり状況が変化している」ことから、今回は再調査となる。ブラジルはパラナ、サルバドール、アマゾンにも足を伸ばす。
小林さんは以前広島市が計画した博物館建設に市の職員として携わり、八四年に移民資料収集のため、初来伯した。
計画自体は頓挫したが、移民の歴史に関心を持ち、個人的に数度来伯。勝ち組移民の日記をまとめた著書もある。
大学の授業では最初に「移民があったことを知っていますか」と必ず質問するが、「五%しか知らない。全国で最も多くの移民を送り出した移民県広島がこれではいかん、と。歴史を教えないから、現在のデカセギへの無理解に繋がる」とも。
日本では移民の悲惨な状況だけが取り上げられがちだが、学生には日系人の活躍を伝えることも心掛けている。
現在、原爆と移民をテーマにした演劇のシナリオ作成にも取り組んでいることから、「今回の調査で移民が何を食べていたのかなど、生活の細部に関する取材もしたい」。六十四歳、広島市在住。