ニッケイ新聞 2009年2月26日付け
ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)は十三日、先月着任した大部一秋在聖総領事夫妻の歓迎会を兼ねた定例昼食会をサンパウロ市内のホテルで開き、百十五人が出席した。国際協力銀行(JBIC)国際調査室の牛田晋主任による講演も行なわれた。
冒頭田中会頭は、総領事がラテンアメリカ圏と関わりの深いことに触れ、「新しい百年が始まる意義ある時に着任されたことは喜ばしい」と歓迎。また、現在の日伯経済関係においては「プロジェクトが多様化しており、官民一体でやらないといけないものが増えている」と述べた。
「日本の中でどう中南米の存在意義を出すか、二、三十年前から旗を振ってきた」と自身の経歴を表わした大部総領事。「中南米で一番重要な国で勤務していないことが気になっていた」と着任を喜び、ポルトガル語の習得とともに、「百年の歴史で築かれた土台の上に何を追加し、どう次の百年をめざすかを考えている」と述べた。
未来のブラジルを「世界の中の大国になっていく存在感を出していく国」と位置付け。日系社会の存在や、商議所の会員企業三百社をはじめとする企業の存在などに触れ、「将来性のある、すばらしい所で仕事をさせてもらえることを喜んでいます」と話した。
続く特別スピーチでは、マリンガ市で進む日本移民百周年事業「パルケ・ド・ジャポン」の関係者と訪れたシルビオ・バーロス市長が、各企業のこれまでの支援に感謝を表わし、さらなる支援を要請。オウリーニョス市のトシオ・ミサト市長は同市のインフラや各種施設、企業進出状況などを紹介した。
このほか、サンパウロ日本人学校の清水喜義校長も訪れ、世界有数の規模である同校について紹介。また、ダイキン工業顧問の岡田茂男氏は「経営者は知恵を出せ」をテーマに講演、松下幸之助氏の「好況良し、不況はさらに良し」との言葉を引き、不況の時こそ知恵と工夫で経営を伸ばすのが企業経営であると語った。
JBICの牛田氏による特別講演のテーマは、「わが国製造企業の海外事業展開に関する調査報告」。海外に三社以上の現地法人をもつ日本企業を対象に行なっているアンケート調査で、一九八九年から実施している。
この日発表されたのは昨年七月から十月にかけて実施された調査を集計したもの。世界金融危機が顕在化する前ということもあるが、回答した六百二十社のうち七九・二%が中長期的に海外事業展開を「強化・拡大する」と答えている。国内事業は前年比八%増の約五三%が「現状維持」。
今後三年ほどで見た有望な事業展開先としてブラジルを挙げたのは九十一社。昨年の調査から四十四社増え、全体の順位でも七位から六位に上がった。ブラジルを有望とする理由は、「今後の成長性」「安価な労働力」といった点、一方課題としては「他社との激しい競争」「情報不足」「インフラの未整備」などが挙げられた。
ちなみに一、二位は昨年同様中国(297社)、インド(271)だが、有望と答えた企業の数は減少しており、上位十カ国内で前年より増えたのはブラジルとロシアのみ。
〇四年からの調査結果で見ると、中国と答える企業が漸減傾向にあるのに対し、ブラジルは〇四年時の十六社から五倍以上増加。長期的な有望事業展開先と答えた企業も〇四年の三十七社が〇八年には百三十一社に伸びた。
具体的な事業計画があるかどうかについても、ブラジルはインド、ロシアとともに増加傾向にあり、関心の高まりをうかがわせる結果となっている。