ニッケイ新聞 2009年2月21日付け
FAT(労働者支援基金)資産運営課は十九日、失業保険を五カ月から十カ月に拡大した上、雇用創出企業への融資などは、国庫の支援でもない限り財政的に無理と表明したことを二十日付けエスタード紙が報じた。政府は金融危機対策の名目で二〇一〇年までにFATに四億九千七百二十万レアルの赤字を計上させ、二〇一二年はお荷物になるだろうと発表。ルッピ労相はFATに二〇〇九年、失業保険の拡大を考えよと命じた。
TCU(連邦会計検査院)がFATに赤字運営を行わないよう警告し、労相は政府の要求に応じられるはずだと圧力をかけ、FATは両者の板ばさみになっている。
労相の二月初めの発言内容によれば、失業保険の拡大は、国庫からの財政出動か、雇用拡大企業への融資を削減・取り止めによる余剰財源で可能だとしていた。
政府は二月初め、失業保険を五カ月から七カ月に拡大する方針を決定、現在の基金資産百十億レアルの一〇%切り崩しを認めた。PIS(社会統合基金)とPasep(公務員統合基金)から四〇%がBNDES(社会開発銀行)へ、二〇%がDRU(政府自由枠資金)へ。残りがFATへ回る。
FATの財務責任者によれば、同基金は年々歳出が歳入を超え、財政的に窮迫しているという。FAT審議委員会は十一日、中古車販売代理店へ二億レアルの貸し付けを決めた。業界の解雇阻止が目的であった。
財務責任者はさらに、FATが二〇一〇年、創設以来初めて四億九千七百二十万レアルの赤字決算を発表し、その後雪だるま式に四十三億レアルの累積赤字を計上しながら政府のお荷物になるだろうと警告した。
二〇〇九年の経済成長率が三%を達成しても、二〇一〇年を四%にしないとFATの累積赤字は、決済できなくなる。社会保障院の雪だるまがようやく溶け始めたのに、次の新しい雪だるまをつくるようなもの。
ルッピ労相は、FATの前期資産と新たな入金で総額が千六百億レアルになり、二〇〇九年は安泰と見ている。問題は二〇一〇年だ。雇用事情がさらに悪化するなら、ブラジルだけの問題ではなく恐慌時代だという。
TCUはFATが赤字になるのは、最低賃金の調整や正規雇用の増加など構造的出費と見ている。FATが赤字を計上することは、国家財政が赤字を生む構造になっていることを意味する。