ニッケイ新聞 2009年2月20日付け
一九九九年に起きたサンパウロ総合大学(USP)医学部の新入生エジソン・スエーさんの水死事件から十年経った十八日、大学での新入生に対する暴行を罰するための法案が下院を通過と十九日付伯字紙が報じた。
新入生歓迎といいつつ実質は新入生いびりやいじめという行為は昔からあったが、この行為が一般道徳に反し、肉体的、精神的苦痛を伴うと判断されれば、二万レアル以下の罰金や一~六カ月の授業停止、一年間の停学などの罰則を適用するというのが今回の法案。
〇九年の新入生いびりで注目された一例は、サンパウロ州レーマ市のアニャングエラ教育大学センター獣医学部。動物の糞尿の混じる泥に飛び込まされ、酒を無理強いされるのは序の口で、ブルーノ・セーザル・フェレイラさんの場合、鞭打たれ、糞尿の洗礼後は、腹や頭をけられ、ピンガも飲まされた。さらに、急性アルコール中毒を起こして座った椅子が壊されて後頭部をうち、意識不明になったまま道路に放り出されたブルーノさんは、病院に運ばれ入院。
「人に対してさえこんな扱いが出来るなら、動物をどう扱うかは推して知るべし」とはブルーノさんの言葉だが、この他にも、妊娠中の新入生が化学薬品入りの液体で火傷を負うなど、警察沙汰になったケースもいくつかある。
また、新入生との飲み会資金調達手段で、交差点に止まった車やバスの乗客らに小銭を求める恒例のエスモーラも、罰則適用の一例。絵の具で学校のイニシャルを書かれたり、髪の毛やシャツを汚されたりする例は高校でも起きるが、今回の法案の対象は大学以上。
大学に馴染み、先輩との交流のための機会というだけなら、肉体的、精神的苦痛に命の危険さえ伴うような限度を超えた暴行は不要なはず。暴行者が罰せられずに学生生活や社会生活を送ることへの被害者や遺族の怒りと共に、古い慣習への罰則適用や大学当局への教育義務付加への抵抗感も根強い。
今後は上院へ送られる同法案に対して賛否両論が出ているのも、高等教育機関での行き過ぎた行動に対し、一般社会の関心が高まっている証拠といえそうだ。