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簡易住宅ローンに伯銀を=大手銀の伝統破る=任期中の分譲に総力集中=大統領選に向け地盤強化

ニッケイ新聞 2009年2月18日付け

 連邦貯蓄銀行(カイシャ)が現政権の任期中に、低所得層向け簡易住宅百万戸の分譲を困難視していることで、ルーラ大統領は十六日、ブラジル銀行の営業分野ではないが、簡易住宅ローンを開設するよう同行に要求と十七日付けフォーリャ紙が報じた。大統領の考えではカーニバル後、庶民住宅包括案を発令し、十最低賃金(四千六百五十レアル)以下の労働者が購入できるようにする。来る十五年における住宅需要の七〇%以上はこのクラスの庶民で、ルーラ大統領が支持を強化したい層だと同紙は報じた。

 カイシャに対する大統領命令は今年五十万戸、来年五十万戸の住宅分譲であった。カイシャのマリア・コエーリョ頭取は、同行の力では毎年三十万戸から三十五万戸が限界だと嘆願した。
 それで住宅ローンには経験のないブラジル銀行も手伝えという命令だ。フォーリャ紙は「これは、二〇一〇年の大統領選の地盤強化と政権継続につながる大切な布石だ」と分析する。
 低所得層向け住宅ローンは、購入者が当てにしているFGTS(勤務年限保障基金)に引出し許可が出ていない。
 それは民間銀行へ、FGTS引出しに対する政府の見返り保証がないからだ。政府が考えている住宅購入希望者は、住宅ローンを組める状態にない。それなのに政府は、銀行の融資業務と同じように出せというのだ。
 これらの購入希望者層は、PT(労働者党)政権を支える大黒柱として強化したい層だ。この所得クラスが、PTが強化したい地盤であり、同クラスの支持を広げれば政権は安泰だと考えているようだ。
 問題は銀行の伝統が、このクラスの人間を軽視にすること。預金するほどのカネも、ポウパンサに貯蓄するほどのカネも持っていないから。
 ルーラ大統領は、簡易住宅には二つの効果があると考えている。失業対策と簡易住宅の分譲。もう一つは、ブラジル銀行の業務拡大。金融危機で業務が縮小したいま、未知の分野を開拓させる。
 ブラジル銀行に、住宅ローンがなかったのではない。金持ちだけを相手にしたので、さびれたのだ。今度は政府が、一戸五万レアルの住宅を基準としている。建設コストは、分譲価格の四分の一で造らせる。
 金融危機後、政府の公立銀行に対する圧力は厳しくなり、ブラジル銀行が高額所得者、カイシャが低所得層としたこれまでの縄張りを取り外した。流通量枯渇に際し政府の方針に役立たない銀行の伝統は、PT政権にとって目の仇でしかない。