ニッケイ新聞 2009年2月14日付け
政界は何が起こっても、おかしくはない。坦々とした道だけならいいけれども、ときには突風が吹き荒れ急峻や山沿いの断崖を命綱一本で谷底に下りる危うさもある。「怒るというよりー笑っちゃうな」の小泉元首相の麻生批判は、さながら暴風であり、倒閣運動にも繋がりかねない。それほどに厳しい非難であり、最近では珍しい政治的な発言である▼小泉さんは、政界引退を表明しているが、今でも人気は高い。次の首相の世論調査でも、1位か2位に選ばれ、政界への影響力は強い。あの郵政選挙で自民党を大勝利に導き、夢の「郵政民営化」を実現した大物である。ところがー小泉政権で重く扱われた麻生首相が近頃、この民営化政策を批判し始めた。これに対する小泉さんの怒りが爆発したものと見たい▼漢字の誤読や度重なる失言などもあり、与党にも麻生批判は高い。小泉さんと歩みを共にする武部勤、中川秀直両元幹事長らも一線を画しているし、この勢力が自民党内で16人に達すると、衆院で3分の2可決が不可能となり、麻生政権の立場は弱くなって宙に浮きー行き着くところは解散・総選挙の選択しかなくなる▼麻生陣営にもっと痛いのは、小泉さんが給付金に疑問符を付けたことである。首相は来週にも可決をと懸命ながら、もし野党と小泉勢力が連携し否決されでもしたら内閣もお手上げである。と、これも解散か総選挙しかない。自民党にこれほど寒風が吹くときはない。そこへ衆院選挙となれば100の議席を失うの観測がしきりだし、失言宰相の悩みは大きい。 (遯)