ブラジル女性暴行受け流産=ネオナチ青年3人組から=外国人排斥強まるスイスで
ニッケイ新聞 2009年2月13日付け
景気後退などで外国人排斥の動きがより強まっているスイスで、現地在住のブラジル女性がネオナチと見られる青年三人組から暴行を受け流産と十二日付け伯字紙が報じた。
現場は、チューリッヒに程近いデューベンドルフ市。現地の多国籍企業で働く二六歳の弁護士パウラ・オリヴェイラさんは九日夜、自宅近くの駅で、丸刈り頭で黒シャツの三人組に襲われた。
仕事帰りの電車から降り、ペルナンブコ州レシフェに住む母親との電話中に襲われ、人気のない所に連行されたパウラさんは、殴られ、衣服も一部剥ぎ取られた上、カッターナイフ(エスチレッテ)で、顔や首、腹、足などに、SVPの文字も含む無数の切り傷。寒中での暴行後には双子の女児の流産も起きた。
SVPは極右政党のスイス国民党の頭文字で、国民の二九%が支持する同党は、国旗上の白い羊が黒い羊を外に蹴り出すポスター使用など、人種差別や外国人排斥の傾向がとりわけ強い。
金融危機による失業増加など、景気後退で外国人排斥の動きが一段と激しくなったスイスの移民総数は約一五〇万人(二五%)で、従来は、トルコ人、旧ユーゴスラビラ人、アフリカ人が外国人排斥の主な標的だった。
今回の事件は、被害者が正規の在住者で夫はスイス人とは知らない青年が、ポルトガル語会話を耳にして起こしたと見られるが、犯人の一人は後頭部にカギ十字のマークもあり、SVPとつながりのあるネオナチによる犯行と考えられている。
ただ、解せないのはスイス警察の対応で、被害者の訴えを自作自演と疑い、供述書も作らなかった上、ブラジル領事が問い合わせても、本人に確認しろとそっけない返事。
十日に現地に飛んだ被害者の父親は、外務省の対処を求める一方、退院後のパウラさんは身柄の安全のためにもブラジルに連れ戻し、事件のショックから回復するまで手元に置く、と話している。
今回の犯行が組織的な外国人排斥運動の一部かは不明だが、人種差別に基づく暴行事件が〇七年は〇六年の三〇%増えていても、同国政府は人種差別、外国人排斥の動きを重視しない中、ブラジル外務省の早急かつ適切な対処も求められている。