ニッケイ新聞 2009年2月10日付け
ダッタフォーリャ調査会社は八日、家族の誰かが過去六カ月に失業した世帯がサンパウロ市で三一%あると発表したことを九日付けフォーリャ紙が報じた。経済危機に関わらず全体の六六%は失業の心配なしと答えたが、その一方で、DとEクラス(世帯所得三最低賃金以下)では四〇%がすでに失業、さらに三一%は失職の可能性があるという。また、庶民は過去の体験から、所得の低減と失業への対処を生活の知恵として弁えていることが調査から判明した。
調査は二月三、四日、十六歳以上の六百十三人に質問した。雇用が安定しているのは、高学歴のA、Bクラスだけ。今回の危機では所得の低い家庭ほど、失業の可能性が高いことが判明した。
労組調査部(Dieese)は、低所得層はもともと経済の調整弁とみなされており、真っ先に人員整理の対象となるが、景気が好転した時の再就職も早いという。数字は大きいが「社会不安を形成しない」と見られているため、経営者は安易に整理するのだと考えられている。
注意すべきことは、雇用創出が停滞していること。調査で半数近くの四七%が、雇用を保証するなら減俸も容認することが判明。低所得層に至っては、五五%が容認。低所得層ほど経済危機の影響を、肌身に感じているようだ。会社の給料だけが命綱の人たちに、経済危機がまともに正面衝突をしたようだ。
危機の衝撃が少ないのは、労働裁判所で提訴の方法を知っている高学歴層のようだ。この層の職業には、いつでも首のすげ替えができる後釜が待機しており、自分もどこかへ横滑りができる可能性が高いようだ。
経済危機のもう一つの現象は、労働者の三二%が耐久消費財の購入をひかえ、消費市場を停滞させたこと。金離れのよいD、Eクラスに至っては、三七%だ。三二%のうち一一%は、乗用車とバイクであった。
三最低賃金までのクラスは、食品や衣料、靴、衛生用品などの非耐久消費財を、五四%が平常通り消費、一九%が節約と答えた。二七%は危機を逆手に利用したという。
〇七年までの失業率は、消費の低下を招くことなく国内市場を育てた。調査は、世帯が家族単位の所得で耐久消費財の購入を行い、個人の所得に重きを置いていないことを示唆した。
生活様式の変化は、急激な工業生産低下や一斉解雇を招かないように消費も適度に伸びるように調節されている。これは長いハイパーインフレの時代から学んだ、所得の目減りと失業の憂き身を計算に入れた生活の知恵といえる。