ニッケイ新聞 2009年1月20日付け
ルーラ大統領了解のもとに閣僚や大統領側近による非公式外交を展開することが十七日に判明し、当局の外交政策から独立した動きがあることに外務省が戸惑っていると十九日付けエスタード紙が報じた。中東和平やG―20などの大きな外交課題はアモリン外相の担当とし、南半球連合はギマランエス外務次官、ラテン・アメリカはガルシア特別顧問、Bricsと米仏はウンジェル戦略相、国防はジョビン国防相、環境はミンク環境相など。
中東和平という世界の大問題にアモリン外相が取り組んだことで、中近東以外の地域に生じる外交問題に、政府は夫々の専門家を派遣する先手外交を展開するようだ。
ブラジルが外交能力を発揮する機会として、世界の火薬庫である中東和平や国際経済の進路を決めるG―20の他に、国防や環境、南半球連合、中南米カリブ会議、左翼政権のリオ・グループ、米仏伯枢軸などを手分けで対処する方針。
ウンジェル戦略相は一月初旬、オバマ新米大統領が組閣中のブレーンと通商協定や軍事同盟など高度の外交問題を協議、外務省を刺激した。
同相はその途次コロンビアにも立ち寄り、ウリベ大統領や関係閣僚と会い、防空問題や科学技術についても話し合った。ルーラ大統領には了解済みとはいえ、外務省の頭越し外交であった。
ポーランドのポッツマン環境会議に月末、ミンク環境相の出席が予定されている。ドイツとノルウェイの協力を得てアマゾニア基金の獲得が目的。これも外務省抜きで行われる。
他にFarc(コロンビア解放前線)に幽閉されている残りの人質解放やキューバ外交、ベネズエラとボリビア、エクアドルの左翼政権外交なども緊密化する。外交チャンネルが増えるほど、混乱や誤解を招く可能性も大きくなる。
外交のベテランらは多極外交を展開しても、統制管理責任者の不在を懸念する。戦場で兵士が何の戦略も指揮もなく、バラバラに戦うようなもの。バラバラ外交は、残る二年の政権もバラバラで計画性がないことを意味するという。
例えばアモリン外相が中東和平で現地を奔走する一方で、ガルシア特別顧問がイスラエルを「テロ国家」と呼び、その直後、与党PT(労働者党)が「非戦闘員殺害はナチスと同類」と声明を発表した。イスラエル政府は、ブラジル外交を未熟として無視した。