ニッケイ新聞 2009年1月20日付け
ケンブリッジ大学のハ・J・チャン教授は十八日、ブラジルの高金利政策はハイパーインフレの後遺症で、経済成長率で遅れをとるのは積極性を失って臆病となったためと発表したことを十九日付けフォーリャ紙が報じた。ラテン・アメリカ経済開発会議で講演のため来伯した同教授は、次のように述べた。
保護主義で歪んだ国際通商システムは、見直す必要がある。保護主義は低開発国経済を守るための関税障壁であり、各国の発展程度に応じて保護主義を設定すべきだ。
韓国経済がブラジル経済を追い抜いたのは、地場産業に力を入れたため。韓国は先進国と競合するため、産業の技術蓄積を目標とする教育を、幼児クラスから仕込んだ。
エンブラエルも創業時代、政府の補助金で育てられ、ボンバルディアやフォッカーと競える企業に成長した。それがなかったら現在は、なかった。国によっては、補助によって伸びる産業と怠惰になる産業がある。
ブラジルは巨大産業や多国籍企業を生み出した国だが、ブラジルの問題は国内需要にある。原因は通貨政策の失敗だ。高金利政策により過大な財政黒字を生んだ。ブラジルは馬鹿の一つ覚えのように、インフレ抑制第一主義を長期間続けた。
PT政権初期には正しくても、二〇〇九年の今も正解とはいえない。ハイパーインフレ体験国は高金利政策を理解するが、ブラジルは長すぎたため起業精神を摘み、苦労して生産するより国債を買う方が得だという考え方を生みつけた。
ブラジル企業は保守的になり、融資を受けての設備投資をしなくなり、工場拡張も止めた。国際市場でブラジル企業は消極的になり、国際金融から融資を受けることに自信を失ったようだ。
中国も韓国も十年前、ブラジルの足元にも及ばなかった。現在は世界の市場でブラジルと競っている。ブラジルは持てる力を出していない。インフレ抑制政策が、ブラジルの活力を殺いでいる。