ニッケイ新聞 2009年1月20日付け
「会館は売りません」――。ピラチニンガ文化体育協会(重田エルゾ会長、会員二百二十人)は臨時総会を十七日午後に開き、不動産開発会社「ESSER」と交渉中の商業センタービル建設案について、出席した二十二人の会員らに説明した。会館が建つ文協所有地(三千平方米・土地評価額九百万レアル)と、隣接する土地(千五百平方米、すでに同社が購入済)に二十四階のテナントビルを建設し、地上部分一階部分を同文協会館として利用するというもの。重田会長は会館売却の噂があることに関し、「定款上不可能」と否定。そのうえで、「地下鉄も近く開通し、会館も古くなっている。文協が経済的に負担するものはない」と同案を全面的に支持する姿勢を見せながらも「多く会員の声を聞き、カーニバル前の二月中旬までには、結論を出したい」としている。
ピラチニンガ文協は一九五〇年に創立、二世の大学生らを中心に組織され、日本文学のポ語訳本、雑誌『ピラチニンガ』を発行。キャラバン隊を組織し、地方の同世代との連携を図るなど、文化的活動だけでなく、日系二世のアイデンティティ確立に大きな役割を果たした。
また、元鉱山動力大臣植木茂彬、建築家大竹ルイ、日系初の判事渡部和夫氏ら、各分野で活躍する日系二世を多輩出したことで知られる。
現在の土地は、一九三〇年代に地元ピニェイロスの日本人有志が購入、大正小学校の分校として運営されたが、戦後同文協に寄付された。
現在の会館は六〇年代に建築され、三千平方米の敷地にバレーコート、剣道場、プールなどがあるが、老朽化が目立ち、以前から改築の必要が叫ばれてきた。
同案では、プールや体育館、ロビー、舞台施設や公園などが作られる予定。なお、地階に建設が予定される駐車場のうち、五十四台分が同文協に確保される。
「テアトロの賃貸料や駐車場収入も見込め、地下鉄の開通により、多くの利用者が期待できる」と重田会長は話し、「現在のままでは将来的にやっていくのは難しい」と表情を曇らせる。
同文協の年間運営費は、十五万レアル。イベント開催や会費収入などに頼っているが、現在会費を完納している会員はわずか六十二人。老朽化する施設の改装には莫大な金額がかかるとも強調する。
同日午前には、元会長、評議員会長で構成される高等審議会(Conselho Superior)のメンバー九人が会合し、問題を討議。同案を支持する方向で意見がまとまったが、「もっと会員の声を聞くことが必要」とするに留まっている。
重田会長は、「ESSERからは〇八年末までに文協としての方向をまとめて欲しいと言われており、早く決めなければいけない」とし、会員らに理解を求める考えだ。