ニッケイ新聞 2009年1月8日付け
ブラジルの温暖化対策案がポーランドでの国連環境会議で賞賛を浴びた記憶も新しい十二月二十三日、鉱動省サイトに掲載された〇八~一七年のエネルギー計画案は、政府の温暖化対策案に逆行と七日付伯字紙が報じた。
アマゾンの森林伐採削減だけで四八億トンのCO2(二酸化炭素ガス)削減という温暖化対策案については十二月五日付本紙既報だが、バイオ燃料などのクリーンエネルギー利用促進により、石油、石炭、天然ガスという化石燃料利用削減を目指すこともCO2削減の方策であったはず。
ところが、今回の鉱動省案では、火力・原子力発電所八二の建設が謳われ、内六八が化石燃料使用型。現在稼動中の七七の火力発電所(内七四が化石燃料使用型)と合せたエネルギー部門のCO2排出量は、現在の一四四〇万トンから三九三〇万トンに増加の見込み。
鉱動省は火力発電所増設の理由の一つは水力発電所建設への環境許可の遅れというが、前環境相のマリーナ上議は、マデイラ川発電所の許可は既に出ており、水力発電は火力発電増加を防ぐために必要との前言を翻す同省の態度を、環境を正当化の手段としたと批判。「鉱動省案は温暖化対策の前進を目指す世界の動きに逆行」と手厳しい。
実際には、火力、原子力、水力の何れの発電も環境への影響が大きく、環境に配慮しつつ、拡大し続ける電力需要に応えるのは容易ではない。
一日付エスタード紙によれば、秒速七メートル以上の風が吹き、風力発電に適した土地は七万一〇〇〇平方キロ以上あるブラジルでは、現在の年間電力消費量四二四TWhの六〇%以上にあたる二七二TWhの発電が可能。特に、五五の火力発電所建設が計画中の北東伯は風力発電に適した土地が多く、鉱動省案が現在の〇・三%から〇・九%への引き上げを計画している風力発電をもっと検討する価値がありそうだ。
年末に開かれるコペンハーゲンでの環境会議では温暖化対策の具体的目標の設定される予定だが、鉱動省案の詳細照会や意見交換は、同省サイト(www.mme.gov.br)で一月三十日まで受付中。