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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年1月7日付け

 今回の金融危機は「百年に一度」といわれるほど深刻なもの。前回、一九二九年におきた世界大恐慌が最終的に終焉するのは、第二次世界大戦まで待たなければならなかったといわれる。戦争により、米国の財政が軍需産業へ集中投下された結果、「内需拡大」がおき、好景気に転換したとの説だ▼思い起こせば、昨年の米国大統領選挙時、十月にパウエル元国務長官「オバマ就任翌日の一月二十一日か二十二日から危機が訪れる」との不穏な発言をしたのに加え、副大統領候補のバイデンも「オバマ就任の半年以内に国際的な危機が発生し、オバマはキューバ危機の際のジョン・F・ケネディのような試練に立つ」と言ったとの報道が流れている。オバマ就任の二十日は、すぐそこだ▼金融危機の発生直後にロシア株式市場がヘッジファンドから狙われて七割も株価が下落させられ、さらにインド・ムンバイでテロも起きた。BRICsの二国が人為的に狙い撃ちされたような状況は不気味だ。次は中国かブラジルか。年末からはイスラエル―パレスチナ紛争が激しさを増しており、不気味な兆候を見せている▼今回の世界不況が、前回を上回る影響を与えるか、誰にも分からない。金融危機の実体経済への波及は今年がピークだといわれる。危機の出口となるのは、破壊と大量殺戮を伴う戦争ではなく、大きな社会・経済の構造改革の方が望ましいことは言うまでもない▼問題は、誰がその将来の見取り図を呈示し、実行に向けて旗振りをするのかという点だろう。新年の年頭にあたり、経済好転(金)と引き換えに、平和を手放してはいけないと肝に銘じたい。(深)