ニッケイ新聞 2008年12月25日付け
国連の人間開発指数(HDI)が発表され、二〇〇六年のデータによるブラジルのHDIは〇・八〇七で世界七〇位を維持したものの、改善ペースが落ちていると十九日付フォーリャ紙が報じた。
平均寿命、大人の識字率、国民一人あたりの所得をもとに算定し、〇~一で表されるHDIは、世界各国に適用される指数で、〇・八以上は高開発国、〇・五未満は低開発国とみなされる。
その意味で、〇・八〇二を獲得した二〇〇七年に高開発国の仲間入りしたブラジルだが、一九九〇~二〇〇〇年の〇・〇八一ポイント上昇に比べ、二〇〇〇~二〇〇六年は〇・〇一八の上昇のみ。
もちろん、一定の水準に達してからの上昇は鈍るものだが、二〇〇五~〇六年の改善要因は一五歳以上の識字率で、八八・六が八九・六に上昇。また、平均寿命は七一・七が七二・〇に、所得は八四〇二ドルが八九四九ドルに上昇したが、学齢期の青少年の小~大学就学率は八七・五が八七・二に下がっている。
一方、気掛かりなのは国内格差の大きいこと。所得別に上下二〇%ずつの数字では、高所得者のHDIは〇・九六八のアイスランド共和国(ポ語でイスランディア)以上、低所得者のHDIは〇・六〇九のインド(同インディア)以下。このため生まれたのが〃イスリンディア〃との新語だが、社会学者も、リオ市の高級住宅地区ではアイスランド、ファベーラの中ではアフリカ(中、低開発国が大半)並みと表現し、大きな格差があることを指摘している。
一方、ラ米カリブ諸国では、〇・八七四のチリから〇・五二一のハイチまで国別格差が大きい。ニカラグアやホンジュラスでは、食物がなく成長できない人々がいると報じた十一月十一日G1サイトでは、ここ二年の食料価格高騰の被害者は全世界で九億人。金融危機で農業投資が減り、状況は更に深刻化ともいう。
二十二日フォーリャ紙も国境無き医師団の報告として、食料価格高騰と栄養失調児の問題を報じたが、新興国の雄で農業大国のブラジルへの世界の期待は大きい。